2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K14549
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
岡村 和樹 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 助教 (20758784)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ランダムウォーク / マルコフ連鎖 / ランプライターグラフ / スペクトル次元 |
Outline of Annual Research Achievements |
有限グラフ上のマルコフ連鎖について、それが既約かつ概周期と呼ばれる性質を満たすときには、マルコフ連鎖の時刻nでの位置の分布は、nを限りなく大きくしていくと、定常測度というグラフに付随して決まる典型的な分布へ速く収束することが知られている。筆者はある種の有限グラフに付随して決まるランプライターグラフと呼ばれるグラフに対して考察した。ランプライターグラフとはグラフとその上のランプの集合のwreath積である。ランプライターグラフに係る研究はグラフが群の場合のwreath積の群構造の解明を元来の動機としているが、その上のランダムウォークの挙動の研究も重要である。
より具体的には、グラフのサイズ、すなわち頂点の個数を大きくするときの極限について、カットオフ現象(ある時刻を境に急に定常測度に近づく現象)が起こるかどうかを、付随する無限グラフのスペクトル次元が2であるようなグラフの場合について、否定的に解決することを目指して考察した。スペクトル次元はグラフに関するある種の次元であり、物理的には熱の拡散速度に関係し、次元が高いほど拡散が速い。スペクトル次元が2でない場合はDembo-Kumagai-Nakamuraによる結果がある。筆者の先行研究である訪問点の個数の研究で得た知見が使えるのではないかと考えて研究していたところ、訪問点の個数の研究に加えて被覆時間に関する研究が密接に関わっていることが判明した。そこで2次元整数格子の場合の先行研究であるDembo-Peres-Rosen-Zeitouniでは2次元のRiemann多様体の場合が考察されているので、そこでの手法を参考にして考察を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スペクトル次元が2であるようなグラフのランプライターグラフ上のランダムウォークの分布の定常速度への収束に関するカットオフ現象を考察するにあたり、被覆時間に関する技術的な詳細の考察が必要になったため。
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Strategy for Future Research Activity |
1. スペクトル次元が2であるようなグラフのランプライターグラフ上のランダムウォークの分布の定常速度への収束に関するカットオフ現象を考察する。 2. グラフ上でランダムウォークがジャンプをもつ場合の訪問点の個数, 特に離散的なコーシー分布になっている場合など、強再帰的である場合と弱再帰的である場合の「境界」に相当するところの詳細な結果を得ることを目指す。 3. 訪問点の個数の連続版であるDirichlet空間の場合のWienerソーセージの場合も、大数の強法則に相当するものや分散の挙動など、先行研究で得られた結果よりシャープな結果が成立すると期待されるが、技術的にクリアしなければならない点があるので新しい方法を試す。
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Causes of Carryover |
旅費が大部分を占めている。しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響による研究集会中止もしくはオンライン化のため旅費を支出する必要が全く生じなかった。このような理由により結果的に大幅に次年度使用額が生じることになった。2021年度も新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける可能性があるため、文具や図書の購入に当てる予定である。
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Research Products
(1 results)