2019 Fiscal Year Research-status Report
繰り込みを伴う非線形確率偏微分方程式の解析に対する一般理論
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19K14556
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
星野 壮登 九州大学, 数理学研究院, 助教 (20823206)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 正則構造理論 / パラ制御解析 / Hoegh-Krohnモデル / パラプロダクト |
Outline of Annual Research Achievements |
KPZ方程式やPhi^4モデルなどに代表される,特異な項を持つ確率偏微分方程式(SPDE)を研究している.このような方程式の解は一般に超関数の意味でしか実現できず,例えば負の正則性を持つ超関数同士の積を定義しなければならないなどの問題が起きる.しかし近年Hairerの正則構造理論やGubinelli, Imkeller, Perkowskiのパラ制御理論といった新理論が発展し,「繰り込み」という作用を施すことで多くの方程式が解析できるようになった.代表者は彼らの理論を特定のモデルに応用したり,理論自体を発展させてその適用範囲を広げるという研究を行なっている. 1.Hoegh-Krohnモデルと呼ばれる指数関数型のポテンシャルを持つ場の理論と,それに付随するSPDEを2次元トーラス上で研究した.その結果,Garbanの先行研究(2020)よりも広い条件でSPDEの時間大域的可解性と定常解の存在を示すことができた.(河備浩司氏(慶應義塾大学),楠岡誠一郎氏(京都大学)との共同研究) 2.正則構造理論とパラ制御解析は扱っている問題は同じであるが,それぞれ異なる手法を用いる独立な理論である.それらの理論が同値であることが示されれば,両者を組み合わせたより簡単な理論が展開できると思われる.代表者はまず2つの理論で使われている実解析の手法が同値であることを,非常に一般的な設定の下で示した.(Ismael Bailleul氏(Universite de Rennes 1)との共同研究) 3.研究2の応用として,パラ制御解析における基本的な道具である「交換子評価」をより簡単な方法で一般的に示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Hoegh-Krohnモデルに付随するSPDEについては先行研究を超える結果を得ることができ,順調に進展していると言える.正則構造理論とパラ制御解析の比較の研究についても,ある程度一般の条件下で両者の同値性を得ることができた.「交換子評価」のような応用例も豊富に作り出せることが期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
Hoegh-Krohnモデルに付随するSPDEについてはさらに条件を広げることが期待できるので,引き続きその研究を進める.正則構造理論とパラ制御解析については解析面での同値性が得られたので,今後は確率論の面,つまり繰り込みの手法を研究する.正則構造理論では繰り込みを一般的に記述する方法が知られているが,それをパラ制御解析でも同様に展開できないか考察する.
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Causes of Carryover |
2020年3月に参加を予定していた研究集会が中止となったため,差額が生じたものである.次年度の出張旅費として支出する予定である.
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