2022 Fiscal Year Research-status Report
内在する時間遅れ構造とその抽出:時間遅れ構造を用いたダイナミクス研究の展開と発展
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19K14565
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西口 純矢 東北大学, 材料科学高等研究所, 助教 (60813392)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 遅延微分方程式 / 定数変化法公式 / 線型化安定性の原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
未知関数の時間微分が未知関数の過去の状態にも依存するような微分方程式を遅延微分方程式と呼ぶ.自励系の線型遅延微分方程式は非線型の遅延微分方程式の平衡点における線型化により得られる.したがって,線型遅延微分方程式の零解の漸近安定性を調べることは,それ自身興味あるだけでなく,非線型問題の理解という観点からも重要である. 「平衡点における線型化方程式の零解が漸近安定ならば,元の非線形方程式も平衡点近傍で局所漸近安定である」という主張は「線型化安定性の原理」として知られている.これは上に述べた非線型問題の理解という観点では,考察すべき第一ステップと言える. 線型化安定性の原理の証明には,常微分方程式の場合は定数変化法公式を用いることができる.これは,解を線型部分と外力に起因する部分に分ける公式である.この公式は,常微分方程式の場合には平衡点における不変多様体定理の証明に用いることができる.したがって,定数変化法公式は常微分方程式の力学系理論において重要な手法の1つとなっている. 遅延微分方程式に対しても,定数変化法公式はこの約60年にわたって発展してきている.しかしながら,遅延微分方程式に対しては初期条件として初期履歴関数が必要となることから,その取り扱いは本質的に無限次元である.このことが遅延微分方程式の研究のさまざまな困難さを生み出す要因となっている. 本研究では,このような困難さを乗り越えるために線型遅延微分方程式に対する「軟解」概念を導入した.これにより,遅延微分方程式の解空間は無限次元であるにもかかわらず,ある種の有限次元性に着目することで基本行列解の異なる定義を与えた.また,それに基づいた定数変化法公式を得て,それを線型化安定性の原理,およびポアンカレ・リャプノフの定理の証明に応用した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
定数変化法公式の研究に時間を要したため.
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Strategy for Future Research Activity |
ネットワーク構造や空間的広がりを持つ時間遅れ系の研究を推進する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症による影響のため.出張及び物品購入に使用する.
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Research Products
(5 results)