2021 Fiscal Year Research-status Report
Variational problems associated with best constants of functional inequalities in a limiting case
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19K14568
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐野 めぐみ 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (70834935)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 最小化問題 / 関数不等式 / 臨界ソボレフ空間 / 非コンパクト / Hardyの不等式 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハーディー不等式やソボレフ不等式等の関数不等式の最良定数及び付随する最小化問題の達成可能性(不等式の等号成立条件)について研究を行った。 特に、複素解析学で現れるリーマンの写像定理から自然に導出される変換である調和移植を起点とし、これまで発見されてきた様々な変換の統一的解釈や新たな応用例(不等式の改良や極限形の導出等)について考察を行った。 具体的には、半空間上でのハーディー不等式の改良及びその臨界形の導出を行い、それぞれ最良定数とその達成可能性について研究を行った。 調和移植は領域上のグリーン関数を用いた変換であるが、半空間の場合はp-ラプラシアンが非線形な作用素であるため、折り返しの方法が適用できず、グリーン関数の具体的な表示が得られない。そのため球上のように調和移植を用いて、Hardy不等式を改良することが難しくなる。そこで具体的に表示されている半空間上の優調和関数を見つけ出し、グリーン関数の代わりにそれを用いて調和移植を行うことで、半空間上においてもHardy不等式を改良できることを証明した。またその改良型ハーディー不等式の極限形として、半空間上での臨界ハーディー不等式を導出した。本研究は論文原稿としてまとめられ、既に掲載決定済みである。 またその他にも調和移植を起点として、非球対称な関数空間の埋め込みのコンパクト性や、ノイマン臨界ハーディー不等式に付随する第二固有値問題の解析等の研究も現在進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、古くから知られている調和移植の新たな一面を発見することに成功し、その具体例として半空間上でのハーディー不等式の改良及びその臨界形の導出、そして最良定数とその達成可能性についての結果を得た。 調和移植はメビウス変換とは異なり、球対称な関数に対してのみ定義される変換であるため、異なる二つの不等式や最小化問題を完全に対応させるものではない。したがって、調和移植により、球対称関数に制限すると二つの不等式や最小化問題は同値であっても、一般には得られる結果や現象は一致しない。したがって、これらは個別に解析する必要がある。特にソボレフ不等式の場合は、まだ完全に分かっていない箇所が残されており、調和移植からは得られない部分は未解決である。その他にも、多様体上で上述の調和移植の新たな応用が得られるかどうかもよく分かっていない。このように調和移植は様々な問題を提起するものであり、今後さらなる研究の発展が見込まれる。 以上の理由により、当該研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
調和移植を起点とし、今後は以下の二つの研究を推進していく。 1.論文(S.,2020)で述べた予想(Non-radial compactness)の肯定的解決 関数空間を球対称に制限することで、非コンパクトであった埋め込みがコンパクトになるという興味深い現象は、Strauss’s radial compactnessとしてよく知られている。この現象は対称性により非コンパクト性が排除されると考えることができ、対称性をより一般化した結果や変動指数へ一般化した結果等が知られている。論文(S.,2020)で調和移植を用いた発見的手法で考察したところ、Strauss’s radial compactnessとは真逆の現象、すなわち「球対称な関数空間の直交補空間に制限すると非コンパクトであった埋め込みがコンパクトになる」という不思議な現象が起こるのではないかという予想が得られ、その予想を肯定的に解決するために、球面平均ゼロの臨界Hardy不等式について研究を行う。 2.Neumann臨界Hardy不等式に付随する固有値問題の解析 3次元以上の場合は、論文(Chabrowski-Peral-Ruf,2010)により、Neumann Hardy不等式に付随する固有値問題に関して、第二固有関数の存在やその漸近挙動等が解析されている。2次元の場合は、Hardyポテンシャルの特異性が強すぎるため、Hardy不等式は破綻するが、代わりに対数補正項を加えた臨界Hardy不等式が成立し、しかもそれは調和移植を用いると球対称関数に対してはHardy不等式と同値であることが分かる。これらの点を踏まえて、Neumann臨界Hardy不等式に付随する固有値問題の第二固有関数の存在とその漸近挙動に関する研究を行う。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で今年度も研究集会が延期やキャンセルとなったため次年度使用額が生じた。 次年度は海外で開催される研究集会への参加や、海外の研究者との研究打ち合わせ等に使用する計画である。
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Research Products
(6 results)