2019 Fiscal Year Research-status Report
Solvability for a nonlinear heat equation with singular initial data
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19K14569
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
藤嶋 陽平 静岡大学, 工学部, 准教授 (70632628)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 半線形熱方程式 / 時間大域可解性 / 時間局所可解性 / 自己相似性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,半線形熱方程式の可解性を考察する.半線形熱方程式の可解性は,自己相似性と呼ばれる方程式に付随するスケール不変性に密接に関係することが既存の研究により明らかにされている.一方,自己相似性を持たない一般の半線形熱方程式に対しては研究代表者によりスケール変換の一般化が提案されている.本研究では,一般化されたスケール変換(一般化自己相似変換)による半線形熱方程式の可解性理論の深化を目的とする. 本年度は一般の半線形熱方程式に対する時間大域可解性を考察した.特に,恒等的にゼロである定数関数を自明解とする方程式を考えたとき,非線形項の自明解付近(ゼロ付近)での挙動によって,時間大域解の存在・非存在が分け隔てられることを示した.これは冪乗型半線形熱方程式に対する藤田指数の一般化を与えるものである.これは,冪乗型半線形熱方程式を含む広範な方程式に対する時間大域可解性を示したものであり,これまでの既存の研究を含み,一般化したものである.特に,藤田指数の一般化に成功したことにより,今後の研究目的である,自己相似解の構築に向け,大きな前進となった. 上記の研究に加え,半線形熱方程式の系(システム)に対する可解性の研究も行なった.特に,2本の冪乗型半線形熱方程式の連立系に対する時間局所可解性の研究を行った.特に,解が存在するときに初期関数が満たすべき必要条件を導出することに成功した.これは,連立系に対する時間局所解が存在するための最適な特異性を求めるための第一歩である.今後,この条件をもとにして最適な初期値の特異性を求めるために,解の存在についての考察を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,半線形熱方程式の可解性理論の深化を目的とする.本年度の研究では,単独の半線形半線形熱方程式の時間大域可解性と連立系に対する時間局所可解性を考察した.単独の方程式と連立系の2つに分けて,以下,現在までの研究の進捗状況を報告する. 単独の半線形熱方程式について述べる.自己相似性を持たない一般の半線形熱方程式の時間大域可解性について理解するのが,本研究課題の目的の一つである.そのためには,前方自己相似解と呼ばれる,拡散と非線形性が釣り合う状況下で生じる特殊解の構造を調べる必要がある.そのためにはまず,方程式に対する時間大域解を分ける非線形項の特徴付けが必要であるが,本年度の研究では実際に大域解の存在・非存在を分ける非線形項の条件を導出することに成功した.これは冪乗型方程式に対する藤田指数と呼ばれる臨界指数の一般化であり,前方自己相似解の構成にあたり必要となる指数である.藤田指数の一般解に成功したことにより,研究の第一段階を終えることができた. 次に連立系について述べる.複数の半線形熱方程式を連立させた系について,時間局所解が存在するための最適な特異性を求めることも本研究課題の目的である.連立系においては方程式間の相互作用により,単独の方程式では生じない状況が現れ,より詳細な解析が必要となる.本年度の研究では,時間局所解が存在するときに初期関数が満たすべき条件を得ることができた.これは最適な特異性を求めるための第一歩である.
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Strategy for Future Research Activity |
「研究業績の概要」および「現在までの進捗状況」で述べたことを踏まえ,今後の研究の推進方策を述べる.単独の方程式および連立系に対してそれぞれの方策を以下で記述する. 単独の方程式に対する時間大域可解性理論の構築のため,自己相似解を構成することを今後の目的とする.ただし,一般の半線形熱方程式に対しては自己相似性の欠如により,一般化されたスケール変換を施した際,剰余項が生じることが予想される.剰余項が方程式の可解性に与える影響を緻密に調べることで,一般化された自己相似解とその形状,挙動について解析を行う予定である. また,これまでの研究で得られた藤田指数の一般化についても不十分な点もあり,扱う対象から除外される非線形項も存在する.時間大域解の存在・非存在についても今後,さらなる解析手法の開発や詳細な解析を行い,種々の非線形項が扱えるようにする. 連立系に対しては,本年度の研究で時間局所解が存在するときに初期値が満たすべき条件(必要条件)を求めることができた.この必要条件から,初期値の最適な特異性が推察されるため,今後は解の存在の議論を進展させることにより,この予想される特異性を持つ初期値が実際に可解性のための最適な特異性であることを示す.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で,年度末に参加を予定していた学会が中止となったため.次年度使用額は2020年以降の旅費や物品購入に充てる.
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