2019 Fiscal Year Research-status Report
Trudinger-Moser不等式に関連する変分問題とコンパクト性の研究
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19K14571
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
橋詰 雅斗 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 特別研究員 (20836712)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Trudinger-Moser不等式 / 変分問題 / 非線形楕円型方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
Trudinger-Moser不等式に関連する最大化問題において、低階の摂動項の影響を考察した。劣臨界の増大度を持つ摂動項において、原点の近傍での振る舞いと最大化関数の存在・非存在との関係性を明らかにし、二次以上の増大を持つ場合と持たない場合で存在・非存在の状況が変わるという結果を得た。この低階項の原点近傍での挙動のみで最大化関数の存在・非存在の境界を明らかにするという結果は前年度行ったLebesgue項での結果を包括するものであり、より一般的なものとなっている。 Trudinger-Moser型の非線形項を持つ楕円型方程式に関しては、劣臨界問題において、解の漸近挙動及び適当な条件下での正値解の一意性の結果を得た。より詳細に、Trudinger-Moser汎関数における指数が十分ゼロに近い場合、正値解は全て第一固有関数に漸近していくという結果を得、この事実から正値解の一意性も得た。一意性の結果に関しては、先行研究にて領域が球の場合のみ証明されていたが、今回の結果は一般の有界領域で成り立つもので、先行研究の結果を包含している。また、この結果は今後さらに拡張できると予想している。漸近挙動に関する結果は一般次元の場合でも同様の結果が得られ、この場合はある準線形楕円型方程式の最小エネルギー解に収束することが証明できる。また、現在この高次元においても正値解の一意性の結果を得ることを試みている。今年度は国際研究集会を含む研究集会、学会等において7件の講演をし、研究成果の発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Trudinger-Moser不等式に関連する最大化問題における低階項の影響については、前年度の結果をより拡張した結果を得ることができ、原点近傍の挙動に関する条件のみで最大化関数の存在・非存在を分けるという明瞭な結果を得ることができた。この結果は古典的Trudinger-Moser不等式の最大化関数が存在する一つの理由付けができたことになり、指数型汎関数特有の性質を発見したという点で大きな結果であったと考える。また、関連する非線形楕円型方程式における正値解の一意性の結果については現在までほとんど研究結果がなく、特に一般の有界領域での結果は現在まで得られておらず、新しいものである。この研究に関しては、期待できる部分まで結果を拡張することに成功すれば、現在まで未解決のまま残っている臨界問題の最大化関数の一意性に繋がるものであると考えている。一意性を示すために用いられる解の漸近挙動に関して、高次元でも結果が得られており、この結果はある種の劣臨界Trudinger-Moser不等式の最良定数の漸近展開を表したものでもあった。 今年度参加した学会や研究集会で最新の研究情報を収集しつつ研究を行えたことも重要な点であった。特に、国際研究集会にてTrudinger-Moser不等式の研究を行っている研究者達と研究議論を行い、研究情報やアイデアの共有ができたことは非常に意義のあることであった。これらの研究成果から考察するに、研究状況については概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はTrudinger-Moser型非線形項を持つ楕円型方程式の研究を行っていく。集中現象を起こす解の列の挙動の精密な解析、正値解の一意性、解の性質と領域の幾何学的性質との関係性など、行っていく予定の研究が幾つかある。集中現象を起こす解の列の挙動においては、一般の有界領域及び高次元でのエネルギーの厳密な漸近展開を行ていく。これらのエネルギーの漸近展開が得られれば、現在まで行ってきた最大化問題の結果を一般の有界領域、高次元における結果まで拡張できると予想できる。また、高いエネルギーを持つ解、つまり複数の集中点を持つエネルギーの漸近挙動についても解析を行っていく。この研究に関しては領域の幾何学的性質と非常に関係があると予想できるので、その考察も行っていく。正値解の一意性に関しては、現在得られている結果の拡張を試みていく。臨界以外の状況では最大化関数の一意性が得られると予想しており、正値解の一意性も得られるのではないかと考えている。 これらの研究により、冪型非線形項にはないTrudinger-Moser型汎関数が持つ特有の性質が明らかになると期待できる。
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Causes of Carryover |
昨今の事情により年度末に参加する予定の研究集会が中止となったため。次年度は新しくノートパソコン、タブレット端末を購入することを考えている。また、幾つかの書籍も購入する予定である。
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Research Products
(9 results)