2019 Fiscal Year Research-status Report
退化型準線形波動方程式の正則性理論の構築とその応用
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19K14573
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
杉山 裕介 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (30712161)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 準線形波動方程式 / 特異点形成 / 解の爆発 / リーマン不変量 / 双曲型保存則系 |
Outline of Annual Research Achievements |
退化双曲型方程式の正則性理論構築の第一段階として、非線形双曲型方程式の典型例であるelastic systemやネマティック液晶を物理的背景に持つvariational wave equationで知られていた解の有限時間における特異点形成の結果をそれらの方程式を含むパラメータ付き準線形波動方程式へと拡張した。elastic systemやvariational wave equationにおいては、方程式が持つ特有の構造(速度の積分に対する保存則やエネルギー保存則)が証明で重要な役割を担っている。その理由は、偏微分方程式からリッカチ型の微分方程式に帰着させる際、解の爆発を抑制する項を制御する必要があるからである。それらの構造がない方程式への拡張は自明ではなかったと思われる。解の爆発を抑制する項をコントロールするために、リーマン不変量に対する新しい不等式を証明し、それを用いた。この結果は、現在論文を準備している段階である。近年、variational wave equationに対する時間大域的弱解の存在が活発に研究されているが、その研究でもやはりエネルギー保存則が重要な役割を果たしている。上述の不等式は、時間大域的弱解の存在の証明にも有効であると予想される。 摩擦項付き空間1次元Euler方程式について、初期値に対して空間無限遠での挙動を一切仮定せずに、小さな初期値に対する時間大域解の存在と解の導関数の時間減衰評価を証明した。これまでの研究においては、エネルギー不等式を用いていたことに起因し、初期値やその導関数に2乗可積分性を仮定していた結果がほとんどであったが、それらを改良したことになる。この結果は、すでに受理されており、Advanced Studies in Pure Mathematics から出版さる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
双曲型保存則系の代表例であるelastic systemにおいては、リーマン不変量の単調性を仮定し(初期値が衝撃波の成分を持たないことを仮定し)、方程式を退化させない時間大域解の存在と有限時間での方程式の退化の発生を分ける初期速度の積分の閾値が存在することが示されていた。本研究の当初の目標は、双曲型保存則系の代表例であるelastic systemにおける未解決問題である、閾値での解の挙動とそれを解決するための「退化双曲型方程式の正則性理論」であった。当該年度においては、前者の研究については大きな進展は見られなかったが、後者の研究においては、elastic systemやvariatinal wave equationにおいては構築されていた解の爆発の結果を、エネルギー保存則を持たないモデルへと拡張することで、正則性理論の構築という点においては、一定の成果があったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
双曲型保存則系やvariatinal wave equationにおいては、時間大域的弱解の存在や弱解の正則性、一意性が活発に研究されている。しかし、それらの研究においては、方程式の構造(質量またはエネルギー保存則等)が重要な役割を果たしており、それらを持たない方程式への一般化は容易ではない。当該年度に研究を行った、それら二つの方程式を繋ぐパラメータ付き準線形波動方程式の解の爆発の研究で用いたリーマン不変量に対する新しい不等式は、エネルギー保存則の代用品として、時間大域的弱解の存在に役立つと思われるので、その方向性で研究を行う予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた国際研究集会への参加を都合により取りやめたため差額が生じた。この差額は、ずれ込んでいる研究打ち合わせのための出張に使用する予定である。
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