2021 Fiscal Year Research-status Report
退化型準線形波動方程式の正則性理論の構築とその応用
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19K14573
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
杉山 裕介 滋賀県立大学, 地域ひと・モノ・未来情報研究センター, 准教授 (30712161)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 退化型準線形波動方程式 / 双曲型方程式 / 重み付きソボレフ空間 / Levi条件 / 一様局所ソボレフ空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
主要項の係数(未知関数の2階偏導関数の係数)が未知関数自身に依存する準線形波動方程式の時間局所解について、これまで知られていなかった条件のもとでで解が一意に存在することを証明した。これまでの研究においては、主要部の係数が一様に下から正定数で抑えられるということを仮定している。この仮定は、言い換えると空間について一様にStrictly Hyperbolicであることを仮定している。今年度の研究においては、この仮定を弱めて、無限遠方で主要部の係数が0へと近づくことを許す条件(つまり、無限遠方で退化した準線形波動方程式を考察した)で、時間局所解の存在を証明した。これまでの退化型双曲型方程式の研究で知られていたLevi条件として知られていた条件が、無限遠方において退化する問題においても現れることがわかった。すなわち、今回証明した結果でも、未知関数の空間一階偏導関数の係数が0へと近づくオーダーが、方程式の退化のオーダーの半分よりも早いことが要求される。 証明できた結果をもう少し詳しく述べると、無限遠方で0へと漸近するオーダーに応じた重み付き空間を設定し、その空間から初期値を取ると時間局所解が一意に存在する、という主張である。さらに、空間次元が1の場合は、特性曲線の方法やリーマン不変量を使うことで、初期値の仮定がかなり緩和できることもわかっている。空間1次元の場合をまとめた論文はすでにComm. Math. Sci.に受理済みであり。高次元の場合は、現在投稿中である。 無限遠点で退化する問題においては、有限な点で退化する場合と異なり、上述したLevi条件は、解の存在についての必要十分条件ではないが、解や解の導関数の有界性を保証するための必要十分になることが現在までの研究で一部わかってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した空間有限な点で退化する解の正則性についてはまだ進展は少ないが、無限遠方で退化する準線形波動方程式においては、Levi条件下で時間局所適切性が成立し、Levi条件がない場合は、線形の双曲型方程式を考えることで、その解または導関数の有界性が崩れることを証明することができた。それと同時に、Levi条件がない場合の解の性質についてはまだまだ検討すべき課題が残されおり、新たな問題も多く発見できたという点において、総合的に見て、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き空間無限遠方で退化する準線形波動方程式の時間局所解の存在及びその解の性質について検討していく。 まず、Levi条件がない場合、初期値の減衰度合いによって解や解の導関数が非有界になることがわかってきたが、その一方で有限伝搬性よりそれらが有界な解も存在している。初期値の減衰度合いに応じた解の性質の分類をまずは行っていく予定である。 それと同時に、時間局所の構成に用いた重み付き一様局所ソボレフ空間の研究を行う。上述の研究では、整数冪の空間を使ったが、分数冪の空間に定義を拡張し、それに伴っていくつかの不等式の拡張を研究する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で予定していた研究集会への参加や研究打ち合わせが中止、延期となった。今年度は、多少人の移動が緩和され、対面での研究集会が開催される予定なので、その旅費に充てる予定である。
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