2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K14580
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
宮崎 隼人 香川大学, 教育学部, 准教授 (70752202)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非線形分散型方程式 / 解挙動 / 散乱理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、本研究課題の主題である非線形分散型方程式の散乱理論に関する研究を遂行し、2つの成果を得た。第1に、結合部にキルヒホッフ境界条件を課した星グラフ上の非線形シュレディンガー方程式 (NLS) における解の漸近挙動について考察した。近年、グラフ構造を持つ数理モデルの研究が多方面で展開されており、非線形分散型方程式においても近年研究が進んでいる。NLSの解の漸近挙動を考察するためには、Dollard分解と呼ばれる、シュレディンガー作用素を4つの要素に分解する手法が重要となる。本研究では、キルヒホッフ境界条件下の星グラフ上でもDollard分解が可能であることを示すとともに、この分解に起因する解の漸近挙動を解析する手法が展開可能であることを解明した。結果、べき型のNLSが、解の漸近挙動に非線形性の影響が現れる長距離型の非線形項を持つ場合に、解の漸近挙動を決定することに成功した。 第2に、不均質な非線形項をもつNLSの解の漸近挙動について考察した。この方程式は非線形光学において、媒体の不均質性を考慮した波動の伝播を表す物理モデルとして現れ、近年数学的な研究が進んでいる。本研究では、べき型の非線形項が長距離型になる条件と解の漸近挙動を特定するとともに、応用として、解が球対称の場合に逆二乗ポテンシャルをもつNLSの解の漸近挙動を決定することに成功した。 これらの研究は全て、青木和貴氏、戍亥隆恭氏、水谷治哉氏、瓜屋航太氏との共同研究であり、既に論文にまとめ投稿中である。 また、昨年度投稿していた、非線形クライン・ゴルドン方程式系の定在波解の不安定性に関する論文と、非斉次型の非線形項をもつNLSにおける爆発解の存在時刻の評価に関する論文が出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の影響により、今年度は一度も出張することができず、対面での議論を行うことができなかった。また、年度途中での異動もあり、環境に順応するための準備も必要であった。結果として、当初の計画にあった、各々の空間軸方向で非等方な分散性をもつ非線形分散型方程式の散乱理論構築に関する研究を進めることができなかった。しかし、コロナ禍の影響で進捗は緩やかではあるものの、本研究課題の大きなテーマである非線形分散型方程式の散乱理論の構築という目的は、共同研究を通して一定程度達成している。これらを踏まえ、進捗状況をやや遅れていると評価した。 今後は、新型コロナウィルス感染症の影響を注視しつつ、現在までの進捗状況を鑑み研究計画の調整を図りながら、十分な研究成果が出るように努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画にあった、各々の空間軸方向で非等方な分散性をもつ非線形分散型方程式の散乱理論構築に関する研究は、現時点であまり進捗が得られていない。また技術的な困難が生じる可能性が高いこともわかってきたため、研究計画を見直し、現在取り組んでいる非線形シュレディンガー方程式の散乱理論に関する共同研究を研究計画の中心に据えることとする。 次年度が最終年度であるが、新型コロナウィルス感染症の影響が続くことが想定される。コロナ禍のため研究遂行に必要になった物品等を随時購入したり、可能であれば情勢を見ながら出張計画を立てたりすることにより、適切に予算執行を行いたい。
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Causes of Carryover |
今年度は新型コロナウィルス感染症の影響で、一度も出張を行うことができなかったため、大きな残額が生じた。次年度もこの影響は続くと見込まれるので、コロナ禍で研究遂行に必要になった物品等を随時購入したり、可能であれば情勢を見ながら出張計画を立てたりすることにより、適切に予算執行を行いたい。
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Research Products
(8 results)