2020 Fiscal Year Research-status Report
反応拡散系のパターンダイナミクスに対する非一様性・非局所性との関係
Project/Area Number |
19K14588
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 宏子 東京大学, 大学院数理科学研究科, 助教 (10759153)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 反応拡散系 / 安定性問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨今では,非局所発展方程式に対する進行波解の存在や,その安定性問題が重要となっている.本研究では,非局所相互作用を含む非局所反応拡散方程式に対する安定性問題に取り組んだ.安定性問題を調べるための手法として確立している固有値問題に対するEvans関数を,非局所反応拡散方程式に対して構成し,具体的な問題に適用することを試みた.有限次元の線型常微分方程式に対するEvans関数は,有限次元の部分空間の交叉を測る解析関数であり,ロンスキー型行列式により定義される.他方,非局所発展方程式の固有値問題は,無限次元ヒルベルト空間上の線型常微分方程式となる.このとき,Evans関数を構成する際の困難として,無限次元部分空間同士の非自明な交叉を調べる必要があり,ロンスキー型行列式を一般に定義できない.本研究では,Deng・新居(2006)により構成された無限次元Evans関数が,幾つかの条件のもと,非局所反応拡散方程式の安定性問題にも適用可能なことを示した.これにより,非局所項を含む反応拡散方程式の,無限遠方で指数減数をする進行波解に対する安定性は,非局所項を含まない反応拡散方程式の安定性と同じであることも得られた.これらの研究は,明治大学の関坂歩幹氏との共同研究に基づくものである. また,Deng・新居(2006)の結果は,空間多次元における解(特に進行波解)についても適用可能であると考えられる.空間多次元における進行波解の安定性問題については,応用も含めて考察している最中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
空間的非一様性,及び非局所相互作用を含む反応拡散系に対する解の安定性解析に関して,論文をまとめている最中であり,研究全体を通しては順調である.安定性・不安定性の結果から,解のダイナミクスや,解のダイナミクスと空間的非一様性・非局所性との関係を調べるところである.
|
Strategy for Future Research Activity |
反応拡散系に対する安定性解析に関しては,論文をまとめている最中である. 今後行うべき内容は, (1): 解のダイナミクスを調べる,(2): 反応拡散系の解のダイナミクスと,空間的非一様性・非局所性との関係を調べる の2点に関して取り組む予定である. 特に非局所相互作用を含む反応拡散系のダイナミクスを調べる際には,反応拡散近似との関係も考察し,近似方程式系とのダイナミクスとの比較も行う予定である.これにより,非局所性が解のダイナミクスにどのように影響するかを調べる予定である.
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの国内感染の拡大に伴い,日本数学会の秋季総合分科会・年会や,Czech-Japanese Seminar in Applied Mathematicsなどの学会・研究集会がオンラインでの開催となり,研究成果発表,および研究に関する情報収集のための旅費を使用できなかった.そのため,次年度使用額が生じてしまった. 新型コロナウイルスの国内感染が収束していれば,学会参加や研究打ち合わせを行う際の旅費に使用するが,国内感染が収束していなければ,論文校正・投稿費や,パソコン周辺機器(ハードディスクなど)の消耗品費として使用する予定である.
|