2019 Fiscal Year Research-status Report
確率過程から離散観測された時系列データにおける統計的推測手法の構築
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19K14593
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
江口 翔一 大阪大学, 数理・データ科学教育研究センター, 特任助教 (50814018)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 確率微分方程式 / 尤度推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の計算機システムの発展と利用環境の向上により、諸科学や産業界の多岐にわたる応用分野において高頻度な時系列データの蓄積が促進されている。このように蓄積されたデータからその背後にある現象を読み解くには、データから本質的な情報を抽出するための手法の開発と数理的研究が不可欠である。本研究は、高頻度時系列データを用いた確率過程によるモデリングに焦点を当て、モデル推定手法の構築及びモデル選択基準の導出、その計算機上への実装を目的としている。 本研究で対象とするようなデータでしばしば用いられる拡散過程モデルにおいて、そのGauss型擬似尤度推定は、通常、モデル時間スケールという要素を恣意的に決定することにより行われる。そこで本年は、拡散過程モデルの擬似尤度推定におけるモデル時間スケールの任意性にデータ駆動的に対処するために、パラメータと複数のモデル時間スケールを同時に推定可能とする手法の提案とその手法により構成される推定量の漸近的性質の解明に向けて研究に取り組んだ。まず、確率過程やGauss型擬似尤度推定に関する文献調査や国際学会への参加による最新の研究動向の調査及び関連研究の講演を行った。その結果、より拡張したモデル設定下でも議論ができる可能性があることが判明した。また、統計解析ソフトウェアR上で、本研究で考案するパラメータとモデル時間スケールの同時推定手法を用いた数値シミュレーションを行った。この数値シミュレーションにより、モデルがエルゴード的か否かによって推定の精度が異なるという結果が見られた。その原因は現在考察中である。さらに、数値シミュレーションを行った同時推定手法により得られる推定量の漸近的性質の解明については、先行研究Eguchi and Masuda(2019, SISP)と同様の条件が必要になると考えており、その条件の精査を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の研究方法に記載したパラメータとモデル時間スケールの同時推定手法に関し、理論を裏付けるために予定していた数値シミュレーションを前倒しで行ったことで、当初予期していなかった問題が明確となった。また、この同時推定手法により構成される推定量の漸近的性質導出とその条件については目処が立っており、その精査を進めている。さらに、より拡張したモデル設定の下での議論も可能であることが判明し、共同研究への発展も期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も最新の関連研究動向の調査を継続する。また、考案するパラメータとモデル時間スケールの同時推定手法によって得られる推定量の漸近的性質を導出するための条件を整理し、数値シミュレーションによりその有効性を検証する。これらの成果を、2020年度中の投稿を見据えつつ論文としてまとめ上げる。さらに、考案する掃除推定手法を計算するためのモジュールを作成し、統計解析ソフトウェアRへの実装を目指す。 当初の研究目的の一項目である、確率過程から離散観測された時系列データを用いたモデルのモデル評価(選択)基準の考案とその導出の数学的正当性の証明に取り組む。
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