2019 Fiscal Year Research-status Report
ロバストな擬似事後分布に対する漸近的な解析に関する研究
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19K14597
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中川 智之 東京理科大学, 理工学部情報科学科, 助教 (70822526)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Objective prior / quasi-Bayes / general Bayes / Asymptotic expansion |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は以下の研究について行った. (i)外れ値にロバストな擬似事後分布の漸近展開についての研究を行った. 漸近展開を行うことで, 標本数がより少ない場合の推定量の挙動を近似的に評価することが可能になった. その応用として, 客観事前分布(Objective prior)の一つであるMoment Matching priorの多次元での導出を行い, 数値実験等を用いて有用性を示した. またReference priorとMoment Matching priorがγ-divergenceに基づいた疑似事後分布(γ-posterior)の場合は汚染分布と汚染率に依らないことがわかった. さらに漸近有効性にも触れ, 漸近相対効率の計算を平均と分散が未知の正規分布の場合で計算を行い, ハイパーパラメータの選択についての一つの指標を導出した. しかしながら, この指標は十分ではなく, 今後の十分な理論解析が必要である. 本研究の成果は国内外の学会において, 発表を行った. 現在, この結果に関しては広島大学の橋本 真太郎先生との共同研究として論文にまとめて投稿中である. (ii)城西大学の清水 優祐先生とともにロバストな擬似事後分布の時系列や拡散過程モデルなどの従属したデータへのγ-posteriorの拡張をするための理論的な背景をまとめた. またシミュレーションを用いて, どの程度の精度があるかを確めた. さらに清水先生とは密に連絡を取り合い, 漸近性質の一部を導出することができた. (iii)本研究ではこれまでHuberの混合モデルを用いて大標本漸近理論でロバスト性を考えてきたが, Desgagne(2015)などでは外れ値が大きくなる漸近理論を用いてベイズ推定のロバスト性を示しており, 本研究に用いるため理論背景を整理した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多変量の場合でロバストな疑似事後分布の漸近展開の導出を行った点は本研究で1つの重要なことである. この結果は多くの応用があり, 今回はMoment Matching priorなどの導出に大きく貢献した. 2019年はγ-posteriorの回帰モデルや時系列モデルへ拡張を行った. さらに回帰や従属データのベイズ 法に関する漸近理論の背景を整理することができ, 今後の研究への準備が整い, 一部の漸近性質を清水先生と導出できている. 回帰モデルや時系列モデルへの拡張は順調に進んでいるが, MCMCなど推定量の計算方法が上手くいかない点などが見受けられた. そのため現在はγ-posteriorの漸近性質の導出をしている. 一方で, 疑似事後分布からのサンプリングを効率的にできるように研究を進めている. また新たな外れ値に対するロバスト性へのアプローチ方法を知ることができ, 現在, 理論背景を調べている最中である. 以上のことから研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は, 「漸近相対効率」,「時系列モデルへの拡張」,「γ-posteriorの漸近性質」について研究を進める. 2019年度の研究では, 平均と分散が未知の場合の正規分布の漸近相対効率は導出できた. 今後は様々なモデルに対して, 漸近相対効率を計算し, ハイパーパラメータの選択方法に応用する. 今年度は回帰モデルや時系列モデルへの拡張を行ったので, 今後は漸近性質の導出を行う. 漸近性質の導出に必要な理論的背景は昨年度に概ね把握できたと考えてため, 今年度は多変量や従属データへに対して, γ-posteriorの事後期待値がどの程度有効なのかを評価する. さらにロバスト性に関して, Desgagne(2015)等にあるような外れ値が大きくなる漸近理論がベイズ 推定に与える影響も研究する.
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Causes of Carryover |
今年度はパソコンや本の購入費や学会等への参加費を抑えられたことが, 次年度使用額が生じた理由である. 次年は国際会議への参加を多くなる予定であるため出費が多くなる予定である. またMCMCなどの大規模な計算機を用いた研究を行う必要があるため, 高性能のパソコンを購入することを検討している.
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