2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of dynamics of weak values as physical quantities from the viewpoint of fluctuation and time evolution
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19K14606
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小川 和久 北海道大学, 情報科学研究院, 助教 (80772574)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 弱値 / 弱測定 / 量子揺らぎ / 不確定性関係 / 弱揺らぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 揺らぎと時間発展の観点から弱値の性質を明らかにすることで, 事前・事後選択された量子系について, 状態ベクトルや演算子を用いずに, 弱値のみでそのダイナミクスを記述する描像を構築することを最終的な目的とする. 今年度、我々は弱値について揺らぎから物理量としての性質を特徴付けることを考えた. 弱測定では元々のプローブ波束の大きさに起因する測定揺らぎが支配的であるため, 明確な弱値の揺らぎの定義は知られていない. そこでまず操作論的に弱値の揺らぎの定義付けを行なった. 具体的には, 我々は従来の理論では無視されていた相互作用の強さの2乗の項に着目し, そこに現れる量の意味や性質を考察した. その結果, 事前・事後選択された量子系に対して定義される「弱確率」と呼ばれる確率分布を拡張した量の分布に対し, その分散に対応する量が, 弱値の揺らぎとして現れていることを突き止めた. 弱揺らぎは通常の弱値と異なり一般に複素数をとる. このような通常の分散では理解できないような複素数の弱分散が, 間接測定系におけるプローブ波束の直交位相平面上での変化として理解できることも明らかにした. 我々はさらに, この複素数である弱分散の観測を, 光学系を用いた実験により観測することを目指した. 現在は弱分散の実部の観測までは完了しており, 理論にほぼ一致する結果を得た. 今後は弱分散の虚部の観測を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のテーマである, 弱値の「揺らぎ」と「時間発展」のうち, 今年度は「揺らぎ」の方の研究を行った. 理論に関しては十分なところまで解明が進み, 実験に関しては完了まであと一歩のところまで進んでいる. 現在は残りの実験を行うことと並行して論文執筆・推敲を行なっている. 以上より, 2年の研究期間全体の達成目標の約半分は進んでいることから, 概ね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず, 弱値の「揺らぎ」に関する実験の残りを完了させ, 論文発表を行う. それと並行して, もう一つのテーマである弱値の「時間発展」について, 理論的な考察を進める. 当初は弱値には揺らぎがないのではないかと想定していたが, これまでの研究により弱値に特有の揺らぎである「弱分散」が存在したため, その量の時間発展も理論に含める必要があると考えられる. また, 弱分散の理論の別の発展方向として, 異なる物理量の弱分散が満たすと考えられる不確定性関係を定式化も検討する.
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Causes of Carryover |
次年度使用額は688円であり、今年度受領した金額はほぼ使い切ったと言える。 この残額は次年度の予算に加算するが、688円のみで使用する予定はない。
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