2019 Fiscal Year Research-status Report
Topological phenomena in unconventional superconductors
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19K14612
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小林 伸吾 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (40779675)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超伝導体 / マヨラナ粒子 / トポロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、トポロジカル超伝導体から得られる見地に基づいて、超伝導体内部の物性を解明することを目的とする。2019年度はトポロジカル超伝導体の表面に現れるマヨラナ準粒子の磁気応答に関する研究を遂行した。 マヨラナ準粒子は電荷を持っておらず電子のような電磁気構造を持たない。しかし、トポロジカル超伝導体が時間反転対称性を持つとき、マヨラナ準粒子はクラマース対を形成し(以下ではマヨラナクラマース対と呼ぶ)、スピンに対する磁場応答が現れる。このような背景の下、我々は(1)マヨラナクラマース対における多極子応答、および、(2)Z_2トポロジカル数に保護されたマヨラナクラマース対の磁気応答の研究を遂行した。以下、それぞれの研究結果をまとめる。 (1)我々はマヨラナクラマース対に対して多極子理論を構築し、クーパー対と磁気応答の既約表現が一対一対応することを明らかにした。特に、J=3/2トポロジカル超伝導体において新奇なトポロジカル現象:磁気八極子応答が現れることを明らかにした。本研究より、表面状態のスピン構造の解析より、超伝導体中のクーパー対対称性を推定できることが解明された。 (2)我々は、(1)の磁気応答の議論をZ_2トポロジカル数に保護されたマヨラナクラマース対の場合へ拡張し、同様に特徴的な異方的磁気応答が現れることを明らかにした。特に、非共型対称性を持つトポロジカル超伝導体では磁気四極子応答が現れることを明らかにした。ここで、グライド対称性が4つのマヨラナ準粒子の存在を要請し、複数のマヨラナ準粒子が四極子応答を実現する。本研究より、表面の磁場応答は、非共型対称性に保護されたトポロジカル超伝導体(UCoGeなど)とその他のトポロジカル超伝導体を識別する指針を与えると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、マヨラナ準粒子の磁気応答より超伝導体のクーパー対対称性を推定する方法を確立することができた。また、研究対象を結晶対称性に保護された多様なトポロジカル相まで拡大することで、前例にない新奇な磁気応答も発見することができた。これらの研究成果は、マヨラナ準粒子の磁気応答より、バルクのクーパー対対称性の推定やトポロジカルに異なる量子相の区別などが可能であることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究より、結晶対称性の保護されたトポロジカル相において、期待以上に多様な磁気応答が発現することがわかった。このことを念頭に、2020年度の研究では、結晶対称性に保護されたマヨラナ準粒子の振舞いをさらに探索したいと考えている。特に、グライド対称性の下では、新奇なトポロジカル相が出現することが先行研究より明らかになっている。グライド対称性の下で、磁気八極子のような多極子応答が出現するのか探索することは面白い問題であると考えている。また、マヨラナ準粒子の電気応答の探索も平行して行いたいと考えている。なぜならば、通常マヨラナ準粒子は電荷を持っていない。さらにはマヨラナクラマース対も直接的には電場に対して応答しない。従って、電気応答の発現はそれ自身非自明な表面状態が現れていることを示唆する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:8月に所属が変わり、周辺環境を整えるのために夏に予定されていた出張は中止した。また、3月に予定していた国際会議や研究議論の出張は、コロナウイルス感染拡大防止を理由に中止した。 使用計画:経費の一部は、研究に必要な図書の購入、および、ノートパソコンの購入など在宅勤務が増えることを想定した研究環境の整備に計上したいと考えている。残りの経費は、事態が収束し国内外の出張が再開された後、共同研究者との研究議論や研究会への参加するための旅費に計上したいと考えている。
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Research Products
(13 results)