2019 Fiscal Year Research-status Report
Universality of thermalization dynamics in cold atomic gases
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19K14628
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤本 和也 名古屋大学, 工学研究科, 特任助教 (40838059)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 冷却原子気体 / 動的スケーリング / 粗視化ダイナミクス / 界面成長 / Family-Vicsekスケーリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、冷却原子系における(A)緩和ダイナミクスと(B)密度揺らぎの成長を中心に、孤立量子系で発現する動的スケーリングを理論的に研究した。
研究(A)では、粒子数が異なる二成分Bose-Einstein凝縮体の緩和ダイナミクスを解析・数値的に調べ、粒子数の小さい成分の液滴が緩和過程で重要な役割を果たすことを明らかにした。具体的には液滴ダイナミクスを解析的に調べ、それに基づいたスケーリングの議論から相関長の成長則を導出して、それが数値計算結果と良い一致を示すことを見出した。また、実験グループと1次元系の反強磁性スピノールBose-Einstein凝縮体の緩和現象の共同研究を行い、緩和ダイナミクスで重要な磁気ソリトンの実験観測に成功した。
研究(B)では、強く相互作用する1次元Bose-Hubbrd(BH)モデルのクエンチダイナミクスを調べて、粒子数揺らぎの性質が古典界面成長で知られているFamily-Vicsekスケーリングで特徴づけられることを明らかにした。具体的には、古典系の揺らぐ流体力学とKardar-Parisi-Zhang(KPZ)方程式の関係を基礎にして、格子上の粒子数演算子から構成される界面高さ演算子をBHモデルに導入した。この演算子の標準偏差として界面荒さを定義し、その成長則を平均占有数を変化させて数値・解析的に調べた。その結果、Family-Vicsekスケーリングが現れること、および、そのスケーリング則を特徴づける3つの指数からEdwards-Wilkinsonクラスと新しいクラスが現れることを発見した。さらに、量子スピン系の代表例であるXXX模型を行列積状態に基づく数値計算で扱い、KPZクラスに属する兆候を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究(A)では、二成分Bose-Einstein凝縮体のスケール不変な緩和ダイナミクスの性質を解析・数値的に明らかにした。この結果は論文にまとめてPhysical Reveiw Aに掲載された。一方、実験グループとの共同研究では、磁気ソリトンの実験観測の結果をまとめて論文投稿したのに加えて、磁気ソリトン観測の先にあるスケール不変な緩和ダイナミクスの実験観測に向けた綿密な議論をテレビ電話を用いて行い、理論・実験グループの円滑なコミュニケーションをとっている。現在、 数値計算を中心に行い、どのような実験状況でスケール不変な緩和ダイナミクスが現れるかがわかりつつある。
研究(B)では、量子多体系の粒子数揺らぎの成長が古典系の界面成長で発展してきたスケール不変な概念で特徴づけられることを理論的に明らかにした点が大きな発見であり、この結果は論文にまとめて論文投稿中である。現在、1+1次元量子系の計算技術を用いて、量子多体系のFamily-Vicsekスケーリングを詳細に調べるとともに、この界面荒さを開放量子系に拡張する計算を行い、着実に新しい結果を得ている。
申請書に記載した研究計画から少し変更点があるが、本研究課題のメインテーマである「量子多体系における普遍的な非平衡ダイナミクス」の研究を行い、論文掲載・投稿をしたこと、および実験共同研究の状況を踏まえて、進捗状況として「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究(A)では、実験観測に向けた共同研究を中心に進めていく。私は実験家と密な議論を行い、理論的なサポートを行う。現在、平均場近似から得られるGross-Pitaevskii方程式の数値計算を行い、実験観測量(運動量分布、スピン相関関数、ネマティック相関関数など)がスケール不変な振る舞いを示すかを検討している。研究(B)では、「孤立量子多体系におけるFamily-Vicsekスケーリングの数理」と「Family-Vicsekスケーリングの開放量子系への拡張」を中心に研究を進めていく。特に開放量子系の研究では、古典系でよく研究されている確率過程(非対称単純排他過程など)とのつながりを意識しながら、研究を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2020年の2、3月に国際会議がキャンセルしたことに伴い、次年度使用額が生じた。次年度使用額は2020年度に計算機購入、出張費などに使用する予定である。
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Research Products
(10 results)