2020 Fiscal Year Research-status Report
Universality of thermalization dynamics in cold atomic gases
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19K14628
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤本 和也 名古屋大学, 工学研究科, 特任助教 (40838059)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 冷却原子気体 / 動的スケーリング / 界面成長 / Family-Vicsekスケーリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(A)ランダムポテンシャル中の自由フェルミ粒子系の界面粗さ成長の理論研究、(B)スピノールBose凝縮体における磁気ソリトンの理論・実験研究、(C)周期駆動されたスピノールBose凝縮体の理論研究を行った。 研究(A)では、Anderson局在を起こすランダムポテンシャル中の一次元自由フェルミ粒子系のクエンチダイナミクスを界面粗さ成長の観点から理論的に調べた。我々の先行研究[Phys. Rev. Lett. 124, 210604 (2020)]では、粒子数揺らぎの演算子から有効的な界面粗さを導入したところ、Family-Vicsek(FV)スケーリングと呼ばれる界面粗さの動的スケーリングが量子ダイナミクスに現れることを議論した。これを参考にして、上記のフェルミ粒子系の性質を調べたところ、ランダムポテンシャルが存在してもFVスケーリングが現れることを数値的に明らかにした。さらにランダムポテンシャルに依存して、スケーリング則を特徴づける3つのべき指数が変化することを見出した。 研究(B)では、1次元系の反強磁性スピノールBose凝縮体に現れる磁気ソリトンを実験グループと共同で理論・実験の両側面から研究した。これまでの先行研究は、二次ゼーマン効果があるときに磁気ソリトンが安定化することを明らかにしていたが、本研究では二次ゼーマン効果がなくても、磁気ソリトンが安定化することを発見した。 研究(C)では、周期振動する二次ゼーマン項で駆動されるスピノールBose凝縮体の共鳴現象をGross-Pitaevskii方程式を用いて理論的に調べた。初めにフロケ定理に基づく線形解析を行い、共鳴条件を解析的に導出した。さらに、Gross-Pitaevskii方程式の直接数値計算を行い、非線形な共鳴ダイナミクスを調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究(A)では、ランダムポテンシャル中の1次元自由フェルミ粒子系の界面粗さが動的スケーリング則を示すことを明らかにし、それを特徴づけるべき指数が系の詳細には依存しない可能性を数値的に見出した。Anderson局在を示すランダム量子系のダイナミクスに動的な一変数パラメータスケーリングが現れることを、界面粗さ成長の視点から明らかにしたことは本研究の独創的な点であり、当初の研究計画からは予想できなかった研究成果である。 研究(B)では、1次元系の反強磁性スピノールBose凝縮体の緩和ダイナミクスで重要な役割を果たす磁気ソリトンの基礎的な性質を理論・実験の両面から調べた。本結果はこの系の緩和ダイナミクスを深く理解する上で基盤となる知見であり、これをもとに次のステップに研究をすすめることが可能となった。 研究(C)では、周期駆動されたスピノールBose凝縮体の非平衡現象を理解する上で基礎となる共鳴ダイナミクスを理論的に研究した。これにより共鳴条件のみならず周期駆動系におけるエネルギー吸収などの非線形ダイナミクスの理解が進み、今後の研究の基盤となりうる成果を得た。 これらの研究実績は、当初の研究目的である「量子系が定常状態に向かうときに現れる物理を明らかにすること」に向けた着実な成果である。またランダムポテンシャル系の研究は申請段階の研究計画には入っていなかったが、上述のように興味深い結果が得られた。以上より、「(2) おおむね順調に進展している。」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究(A)については、まずランダムポテンシャルがない場合の粒子間相互作用を含むBose-Hubbardモデルの界面粗さ成長の研究に拡張する。time-evolving decimation methodを用いて、粒子数揺らぎから界面粗さを計算して、動的スケーリングの有無とそれを特徴づけるスケーリング指数を明らかにする。続いて、ランダムポテンシャルがある場合のBose-Hubbardモデルを考え、同様の動的スケーリングを調べ、ランダムネスの効果を議論する。また量子系の界面粗さは、これまで孤立量子系で研究されてきたが、今後は開放量子系の場合に拡張して、どのようなスケーリング則が現れるかを明らかにすることを目指す。 研究(B)については、磁気ソリトンの衝突過程を理論的に調べる。特に、緩和ダイナミクスで重要な役割を果たすソリトンの対消滅条件を理論的に研究して、その実験観測の可能性を実験グループと議論する。また、多数の磁気ソリトンを生成する新しい手段を考案して、緩和ダイナミクスと磁気ソリトンの関係を実験で系統的に調べる方法を検討する。 研究(C)については、ドメイン壁・渦などの位相欠陥や位相励起が存在する場合のスピノールBose凝縮体を考え、振動外場による基礎的な共鳴ダイナミクスを理論的に調べる。具体的には、フロケ定理に基づく線形解析とGross-Pitaevskii方程式の直接数値計算を行い、振動外場による位相欠陥や位相励起の応答を明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
コロナの影響のために、国内外で開催予定であった会議のほとんどが現地開催がキャンセルになり、その出張費が差額として生じた。
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Research Products
(8 results)