2021 Fiscal Year Research-status Report
Universality of thermalization dynamics in cold atomic gases
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19K14628
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤本 和也 名古屋大学, 工学研究科, 特任助教 (40838059)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 開放量子系 / 界面粗さ成長 / 動的スケーリング / フロケ定理 / Family-Vicsekスケーリング / Lindblad方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、(I)ランダムポテンシャル中の1次元フェルミ粒子系の界面粗さ成長、(II)1次元開放量子系の界面粗さ成長、(III)周期駆動下のスピン1 Bose凝縮体の共鳴現象を理論的に研究した。 研究(I)では、アンダーソン局在を示す1次元格子上の自由フェルミ粒子系を用いて、その非平衡ダイナミクスを界面粗さ成長の視点から研究した。前年度に局在・非局在転移を示すランダム・ダイマー模型において、Family-Vicsekスケーリングと呼ばれる古典界面成長の動的スケーリングが現れることを発見していた。本年度はさらに界面粗さとエンタングルメント・エントロピーが密接に関連していることを見出した。具体的には、ガウシアン状態の性質を用いて界面粗さとエンタングルメント・エントロピーを結びつける関係式を近似的に導出した。数値計算を行い、界面粗さが成長している初期から中期のダイナミクスにおいて、この関係式がよく成立していることを明らかにした。 研究(II)では、1次元系の自由粒子が環境と相互作用する開放量子系を用いて、界面粗さ成長が外部環境との相互作用でどのように変化するかをLindblad方程式で調べた。その結果、位相緩和する開放量子系において、「Family-Vicsekスケーリングが現れること」と「スケーリング指数が位相緩和により弾道的な指数からEdwards-Wilkinson方程式に対応した拡散的な指数に変化すること」を数値計算と摂動的くりこみ群の解析計算で明らかにした。 研究(III)では、ドメインウォールを持つスピン1 Bose凝縮体を周期駆動したときの共鳴現象を研究した。二次ゼーマン項を周期的に振動させることで、ドメインウォールに局在したスピンモードが励起されることを明らかにした。さらに、ボゴリューボフ方程式にフロケ定理を適用して、この局在モードの性質を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究(I)では、ランダム量子系の緩和ダイナミクスを特徴づけるエンタングルメント・エントロピーが別の文脈で研究されてきた界面粗さ成長と関連していることを明らかにした点が大きな発見であった。この発見と前年度までに得た結果を論文にまとめ、界面粗さ成長の視点からのランダム量子系の緩和ダイナミクスの成果を公表した。その成果は2021年度のPhysical Review Letters誌に掲載された。 研究(II)は、孤立量子系で研究されてきた「界面粗さ成長の視点からの緩和ダイナミクス」を開放量子系に拡張した研究である。位相緩和を記述するリンドブラッド方程式を解くことで、Family-Vicsekスケーリングが現れることを見つけ、これまでに孤立量子系で議論されてきた界面粗さ成長の動的スケーリングが開放量子系でも現れることを明らかにした点が本研究の重要な知見である。本成果は論文にまとめて、現在論文誌に投稿中である。 研究(III)は、これまで研究されてきた一様系の共鳴現象をスピンドメインウォールが存在する非一様な場合に拡張した研究である。この研究において、フロケ定理を適用したボゴリューボフ方程式の一般論を構築し、ドメインウォール以外の位相欠陥、位相励起が存在する場合の共鳴現象を理解するための基礎を構築した。以上より、周期駆動系で現れる位相欠陥、位相励起が生み出す非線形ダイナミクスを理解するための基盤ができつつある。 研究(I)-(III)の成果は、当初提案していた粗視化ダイナミクス、乱流減衰の視点からの研究ではないが、「冷却原子系を想定した緩和ダイナミクスの普遍性を明らかにする」という本研究課題の主目的に沿った研究である。さらに論文出版、学会発表などの研究成果を着実に出しているため、「(2) おおむね順調に進展している。」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は開放量子系の緩和ダイナミクスとスピン1ボース凝縮体の共鳴現象の研究を行う。開放量子系の研究では、1次元系に焦点を絞って、Bethe仮設を用いた厳密解の視点から緩和ダイナミクスに現れる普遍的な動的スケーリングの起源を明らかにする。スピン1ボース凝縮体の研究では、実験グループとの共同研究を想定した数値計算を行い、これまでに明らかにしてきた共鳴現象を実験的に観測するための条件を同定する。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの影響により海外出張ができなかったため、次年度使用額が生じた。次年度も引き続き、海外出張が困難であることが予想されるため、計算機の購入に次年度使用額を使用する予定である。
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Research Products
(6 results)