2020 Fiscal Year Research-status Report
金属相および相転移点近傍における高次高調波を用いた非平衡電子状態の研究
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19K14632
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内田 健人 京都大学, 理学研究科, 特定助教 (40825634)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高次高調波発生 / 極端非線形光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に構築した低温での反射型高調波測定が可能な光学系において、金属や強相関物質の高次高調波測定を行った。 モット絶縁体Ca2RuO4における高次高調波の温度依存性を詳細に調べることで、Ca2RuO4において高調波発生効率がギャップエネルギーと放射エネルギーに関するシンプルなスケール則が存在することを見出した。半導体試料では同様の温度依存性が観測されないことから、強相関電子系ならではの複数秩序の競合により温度変化とともに電子構造が大きく変化していることが高調波発生に寄与していると考えられ、従来の高次高調波研究では実験的に明らかでなかった強相関電子系における高調波の性質を明らかにすることができた。 また、共同研究者とともにTiおよびTi合金における高次高調波発生を観測し、材料の組成に応じて高調波の結晶方位依存性が変化することを明らかにした。 加えて、本年度はサブサイクル応答観測システムとTHz放射測定系の構築をすすた。サブサイクル応答観測システムでは、2fs以下のタイミングジッターでの高速な電子応答を観測することに成功している。また、共同研究者とともに中赤外光誘起THz放射系の構築を行い。THz放射を高次高調波とともに同一条件で観測可能にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であった、サブサイクル応答観測用光学系とTHz放射測定系の構築を行い、中赤外電場駆動下の物質の電場周期より高速な応答と緩やかな応答の2つを観測可能にした。 加えて、モット絶縁体における高次高調波発生の測定によって、従来の半導体では観測されない高調波発生強度にスケール則が存在することを明らかにした。固体における高調波発生 では高調波特性と物性の明瞭な相関や関係はこれまで実験的に確認されておらず、本研究課題で発見したスケール則の起源が明らかになれば、強電場下での多電子ダイナミクスの理解につながると考えられる。 以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に構築したサブサイクル応答観測系とTHz放射測定系を用いて、反転対称性の破れた物質系における2つの時間スケールでの電子ダイナミクスの観測を目指す。加えて、本年度新たに観測に成功したモット絶縁体におけるスケール則が、別の物質群においても成立するかを探索する計画である。
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