2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K14637
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
奥山 倫 明治大学, 理工学部, 助教 (60735562)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 機械的運動 / フォノン / ディラック分散関係 / 可変バンドギャップ / トポロジカル絶縁体 / バルクエッジ対応 / エッジ状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
カーボンナノチューブはその特異な電子的・機械的性質により、基礎科学のみならず、オールカーボンデバイスの中核素子や、強靱軽量なワイヤなどとしての工学的応用も期待されている材料である。従来、基礎物理におけるナノチューブの研究は、もっぱら電子系の性質に着目して行われることが多かった。本研究ではチューブの機械的運動を理論的観点から調べた。本年度はチューブの機械的振動、すなわちフォノン自由度に着目した。フォノンはチューブを構成する原子の、結晶格子のまわりの変位を量子化した準粒子である。この原子変位の面直成分に着目すると、点対称操作に対する変換則は、フェルミエネルギー付近のπ電子系を形成する電子軌道と同じである。したがって、モデルの詳細に依らない対称性由来の物理的性質は、面直フォノンとπ電子の間で共通である。このことから、チューブの低エネルギー電子のディラック分散関係およびチューブの巻き方(カイラリティ)に依存したギャップ(質量項)は、フォノンにも共通して現れることがわかる。さらに点対称性の範疇を超えた電子・フォノン対応関係として、副格子対称性(カイラル対称性)が存在する:π電子も面直フォノンも、主たる性質は最近接格子サイトとの相互作用で記述され、次近接以降の寄与は定性的に無視しうる。電子系では副格子対称性の帰結として、有限ギャップのサブバンドはトポロジカルに非自明となり、有限系では0次元エッジ状態が出現したが、同じ事が面直フォノンにも生じることがわかった。これらの成果は研究代表者が筆頭著者の学術論文として、欧文誌への投稿を準備中である。
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