2021 Fiscal Year Research-status Report
量子スピン液体における磁場励起ダイナミクスと輸送現象に関する数値的研究
Project/Area Number |
19K14645
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井戸 康太 東京大学, 物性研究所, 助教 (50827251)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 量子スピン液体 / スピン伝導 / 数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き、分子性固体β’-X[Pd(dmit)2]2で発現する量子スピン液体の安定性と輸送特性について研究した。5つのβ’-X[Pd(dmit)2]2 (X=EtMe3Sb、Me4P、Me4As、Me4Sb、Et2Me2As)の低エネルギー有効ハミルトニアンの基底状態を変分モンテカルロ法を用いて解析した結果、スピン液体候補物質EtMe3Sb[Pd(dmit)2]2の場合も含めて、実験結果と整合する結果を得ることに成功した。カチオン分子XがEtMe3Sbの場合、基底状態のスピン相関関数が移動積分値の大きな方向に冪的な減衰を示すことがわかった。さらに、スピン伝導に関わるスピンドルーデ重みを計算した結果、スピン相関関数が冪的な減衰を示す方向にスピンドルーデ重みが有限の値を持つことを明らかにした。これらの結果は、スピン液体候補物質EtMe3Sb[Pd(dmit)2]2の基底状態が一次元方向にスピンギャップレス励起を有する量子スピン液体であることを示している。このスピンギャップレスな振る舞いはスピンの自由度が分数化することにより創発されたスピノンの複合励起として解釈できると議論し、これまでの結果とともに原著論文にまとめた。その他、先行研究で提案されていた制限ボルツマンマシンとペアリング波動関数を組み合わせた試行波動関数による計算機能が実装された変分モンテカルロ法のコードを整備した。また、変分モンテカルロ法を用いて異方的三角格子上のHeisenberg模型やKitaev模型などの量子スピン系の解析を行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の分子性固体β’-X[Pd(dmit)2]2の有効ハミルトニアン解析を進め、それらの結果を原著論文にまとめることができた。その他、分子性固体に関連した一次元的な異方性のある三角格子上のHeisenberg模型や拡張Kitaev模型などの解析も別途進めているため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
異方的なHeisenberg模型や拡張Kitaev模型などで生じる量子スピン液体の解析結果をまとめる予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染状況により出張することが難しかったため、次年度使用額が生じてしまった。今後の状況にもよるが、旅費だけでなく物品費として使用する可能性も視野に入れる。
|
Research Products
(7 results)