2023 Fiscal Year Annual Research Report
量子スピン液体における磁場励起ダイナミクスと輸送現象に関する数値的研究
Project/Area Number |
19K14645
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井戸 康太 東京大学, 物性研究所, 助教 (50827251)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 量子スピン液体 / 励起状態 / 変分モンテカルロ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、量子多体系の基底状態や励起状態を柔軟に取り扱える高精度な多体数値計算手法を開発・活用し、量子スピン液体といった強相関電子系において発現する量子もつれの強い多体状態の発現機構とその安定性について調べた。以下にその概要を記載する。
・輸送現象と励起ダイナミクスを取り扱うための多体数値計算手法の開発:変分モンテカルロ法(VMC)は大きな二次元系を柔軟に取り扱える多体数値計算手法の一つであるが、主に基底状態の解析に適用されてきた。本研究課題では、強相関電子系の最も基本的な模型の一つであるHubbard模型を対象とし、電荷動的構造因子をVMCにより計算する手法を開発した。複合粒子のparticle-hole励起対を励起状態の制限されたヒルベルト空間の基底として採用することで、動的構造因子の精度を大きく向上させることに成功した。また、VMCと分極理論を組み合わせることで、Chern絶縁体のホール伝導度に関連した多体Chern数を測定できる手法を開発した。
・VMCを用いた量子スピン液体の安定性解析:Kitaevスピン液体が発現する量子スピン系の磁化過程を調べた。Jordan-Wigner変換に基づいた高精度な試行波動関数を用いて大きなシステムサイズの反強磁性Kitaev模型における磁化過程を解析した結果、先行研究で指摘されていたKitaevスピン液体と磁場誘起強磁性状態の間にある中間状態が多体相関に対して安定であることを明らかにした。また、スピン液体候補物質を含む5つの有機固体dmit塩の第一原理有効ハミルトニアンを解析した。その結果、実験結果と整合する基底状態を得ることに成功した。数値計算で得られた量子スピン液体状態のスピン相関関数とスピンドルーデ重みを計算し、一次元方向にギャップレスなスピン励起になることを明らかにした。
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Research Products
(6 results)