2019 Fiscal Year Research-status Report
磁気スキルミオンによる新奇トポロジカル電荷ダイナミクスの探索
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19K14653
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡村 嘉大 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (20804735)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スキルミオン / スピントロニクス / 磁気光学効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、スキルミオンにおける輸送現象について光学測定という新しい切り口から、ベリー位相効果によって引き起こされる新奇な伝導電子ダイナミクスの解明・開拓を目指している。昨年度は、MnGe薄膜において、スキルミオンのベリー位相から発現するトポロジカルホール効果の分光研究を行った。テラヘルツ領域においてホール伝導度スペクトルを測定したところ、スキルミオンの発現によってフェルミ準位から数meV程度の非常に近い位置にバンド反交差点が誘起され、それが直流極限のホール伝導度に強く寄与していることがわかった。さらに、この薄膜では膜厚を変化させることで、異常・トポロジカルホール伝導度が変化することがわかっていたが、それに対しても本手法を適用しその起源を明らかにした。今後さらに他のスキルミオン物質についても同様の測定を行う予定であるが、そのためにはより広い領域において磁気光学測定を行う必要がある。そこで、磁場3T下で80meV-1eVの帯域の磁気光学測定系を開発した。すでにこの光学系をもちいることによって、テストサンプルとして磁性ワイル半金属Co3Sn2S2における巨大カー効果の発見し、順調に測定が行えることを確認している。また、この巨大効果の起源がワイル点やノーダルリングに由来することを第一原理計算と比較することで明らかにした。 今後は、この測定系を用いることで、他のスキルミオン物質に展開していく。特に、トポロジカルホール効果が異常ホール効果や正常ホール効果に比べて顕著に大きいGd3PdSi2に着目し、トポロジカルホール効果の物理をより直接的に検証する。バンド反交差点と関連する光学遷移が観測できた際には、Alをドープすることでフェルミ準位の制御を行い、光学遷移の系統的変化について議論する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、スキルミオンにおける輸送現象について光学測定という新しい切り口から、ベリー位相効果によって引き起こされる新奇な伝導電子ダイナミクスの解明・開拓を目指している。昨年度は、スキルミオンを示すMnGe薄膜におけるトポロジカルホール効果に注目し、テラヘルツ領域のホール光学伝導度スペクトルを測定することでスキルミオンと電子構造の相関について調べた。その結果、テラヘルツ領域においてバンド反交差点に由来する共鳴構造の観測に成功した。異常ホール効果を再現するモデルとして最も単純な、2バンドモデルによって解析したところ、観測された共鳴構造はバンド反交差点における光学遷移と対応していることを明らかにすることができた。さらには、この薄膜では膜厚を変化させることで、異常・トポロジカルホール伝導度が変化することがわかっており、これを足掛かりにその起源を調べた。これによってスキルミオンと電子構造のカップリングについての知見も得ることに成功した。 今後さらに幅広い物質に対してこのような測定を行うため、80meV-1eV程度の中赤外領域に対応するエネルギー帯域において3T印加できる磁気光学測定系を構築した。テストサンプルとして強磁性ワイル半金属Co3Sn2S2の磁気光学カー回転を測定した。最低温で60 mradにもなる非常に大きな磁気光学カー効果の発見し、順調に測定が行えることを確認している。またスペクトルを第一原理計算と比べることで、この巨大効果がワイル点やノーダルライン構造に由来することを明らかにすることができた。 以上の2つの成果を論文にまとめ投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、構築した磁場下における磁気光学測定系を用いることで、他のスキルミオン物質に展開していく。特に、トポロジカルホール効果が異常ホール効果や正常ホール効果に比べて顕著に大きいGd3PdSi2に着目する。MnGe薄膜では、異常ホール効果とトポロジカルホール効果が同程度に発現しているため、その切り分けが難しいといういわば応用問題であったが、今回は最も単純な系としてトポロジカルホール効果の物理を検証することができる。バンド反交差点と関連する光学遷移が観測できた際には、Alをドープすることでフェルミ準位の制御を行い、光学遷移の系統的変化について議論する。また、磁化に比例しない異常ホール効果として、最近では反強磁性体における異常ホール効果も注目を集めている。その一例として、ほとんど完全な反強磁性体であるCoNb3S6における磁気光学測定を計画している。これにより、バンド反交差点が異常ホール効果に主要な寄与を果たしていること実験的に示す。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] トポロジカル絶縁体表面における半整数量子ホール伝導度の検出2019
Author(s)
茂木将孝, 岡村嘉大, 川村稔, 吉見龍太郎, 安田憲司, 森本高裕, 塚崎敦, 高橋圭, 高橋陽太郎, 永長直人, 川崎雅司, 十倉好紀
Organizer
日本物理学会2019年秋季学会
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