2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K14655
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田縁 俊光 東京大学, 物性研究所, 助教 (10771090)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 擬量子極限 / 電気抵抗振動現象 / 強磁場 / グラファイト / 薄膜 / ファンデルワール積層 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラファイトの擬量子極限(10-30 T)において磁場に周期的な電気伝導率の振動が2017年に発見され、注目されている。その振幅が量子化抵抗程度であることから量子現象由来である可能性が指摘されている。その起源として結晶に積層欠陥による超格子が形成され、そのポテンシャル変調によって干渉効果が起こっている可能性が提唱されているが、直接的証拠はない。本研究ではその起源解明を行うことを目的とする。 最終年である令和3年度は、前年に提唱した、積層方向に沿った密度波の定在波が本課題である磁場に周期的な振動現象の起源である可能性として妥当であるか、新たな試料構造を導入することで検証した。具体的には、50μm四方程度の大きさの2枚のグラファイト微小結晶を顕微鏡下で粘弾性ポリマーを使うことで精緻に位置を制御することで、人工的に積層した構造を持つグラファイトーグラファイトデバイスを作製した。このとき積層するグラファイトの微小結晶は劈開法によってシリコン基板上に転写されたグラファイトであり、その面内の大きさ膜厚は試料ごとに異なる。それらを部分的に重なるように積層することで3つの厚さが異なる領域を作製し、それぞれの領域にリソグラフィによって電極を形成して磁場中電気伝導特性を測定した。本振動現象は10 Tから25 Tの領域で顕著であるが、測定は13 Tまでの領域で行った。 結果として、積層領域と非積層領域いずれも磁場中振動を示し、周期はいずれもおよそ2 T程度であることが観測された。膜厚が増加しても新たな振動成分が現れなかったことを意味し、エピタキシャルでない界面導入では電子のコヒーレンスが保たれないことから定在波のシナリオと矛盾しない。一方で、この結果だけでは振動現象のシナリオを一つに絞ることができていないという問題もあり、角度が0度付近の積層試料を用いて同様の測定を行うことが課題である。
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