2019 Fiscal Year Research-status Report
二色性伝導測定と元素置換による電気磁気効果が電気抵抗に与える影響の解明
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19K14656
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
浦田 隆広 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (30780530)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 電気磁気効果 / 量子輸送現象 / 反強磁性体 / 多極子秩序 / 元素置換効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
空間と時間反転対称性の破れた物質における、電流と磁化の間で生じる新たな電気磁気効果に注目が集まっている。これまでに、電流を印加することによる磁化の制御が報告されているが、その逆効果である磁化を変調させることによる電流の流れやすさの制御に関しては未解明な点が多い。本研究では、この検証を行うために、反転対称性が破れた反強磁性体CaMn2Bi2及びその元素置換系の磁場中輸送特性を測定、評価する。 電気磁気効果で生じる電気抵抗の変化を異方性磁気抵抗効果など古くから知られている現象と区別して評価するために、本研究では磁化と電流の結合の指標となる二色性伝導と呼ばれる現象を同時に測定する。2019年度は、まずは測定系の構築と試料加工を行った。測定系としては、既存の装置に加え、高精度の交流電流源及びロックインアンプを導入した。試料加工については、まずはCaMn2Bi2単結晶を研磨によって薄片化し、次にピコ秒レーザーを用いて細線状に加工した。この後、さらに集束イオンビームを用いて更なる細線化を行った。しかし、集束イオンビームでの加工中に削りカスが端子間に付着(リデポ)してしまい、測定に影響を与えることが分かった。次年度以降で、更なる薄片化を行い、切削量を減らすことでリデポの問題を解消する必要がある。2019年度は、ピコ秒レーザーのみを用いて加工した試料の測定を行った。 温度を変化させながら電気抵抗と二色性伝導の同時測定を行った結果、反強磁性転移点付近で二色性伝導に非単調な変化が観測された。これは当初予想していなかった結果であったが、現在その起源について考察を進めている。また、低温で磁場を掃引させて測定を行った。その結果、二色性伝導は磁気抵抗効果と類似する磁場依存性を見せた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、2019年度内で測定系の構築を行うことが出来た。一方、試料加工に関しては、現時点でも問題なく測定は行えるものの、今後より大きな電流密度を流すために手法を改善する必要がある。ゼロ磁場で輸送特性の温度依存性の測定を行った結果、反強磁性転移温度近傍で非単調な振る舞いを観測した。これは当初予想していなかった成果である。ただし、この起源については、電流方位や磁場依存性を合わせて評価することで考察を進めている状況である。また、低温で温度を固定して磁場を掃引させたところ、二色性伝導と磁気抵抗効果は類似する磁場依存性を見せた。これは単純には、電気磁気効果が磁気抵抗効果を誘起していると解釈できる。今後、磁場印加角度依存性を測定することで、この解釈の妥当性を検証していくことが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
試料加工方法の改善を行うことで、試料に流す電流密度を上昇させる。これにより、二色性伝導をより高精度で測定することが可能である。また、これまでに得られている実験結果の起源を解釈するための補助実験が必要である。これらに加えて、当初の計画通り、元素置換系の実験も行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していたロックインアンプの購入を次年度に延期した。また、3月に参加予定だった学会が開催中止になった影響で、旅費に余りが出た。この余剰分は試料の原料費などに充てる予定である。
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Research Products
(3 results)