2019 Fiscal Year Research-status Report
Unconventional spin transport in new-type Dirac systems
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19K14658
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田口 勝久 京都大学, 基礎物理学研究所, 研究員 (90725194)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スピントロニクス / ディラック / 光遷移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はアンチペロブスカイト型ディラック物質(Sr3SnOなど)における光応答研究を行いました。この物質はΓ点近傍にバンド反転が存在し、その近傍ではナローギャップかつギャップ内にフェルミレベルが位置します。そのナローギャップ近傍のバンド構造は全角運動量J=3/2のディラック電子のモデルで記述することができ、そこでの非自明な物理現象は広く興味が持たれています。 これまでにもJ=1/2のディラック/ワイル電子系における光遷移や光応答研究は世界的に研究が活発に行われており、次世代エレクトロニクスへの応用が期待されています。私たちもこれらの研究を進めてきました。 本研究では、これまでの研究を発展させ、アンチペロブスカイト型ディラック物質における特徴的な光遷移を明らかにする研究を行いました。解析にはバンド反転近傍の有効モデルハミルトニアンを用いてナローギャップ間の価電子バンドー伝導バンド間での振動子強度を双極子近似の範囲内で解析しました。 その結果、従来のJ=3/2ディラック電子系特有の光遷移が生じることが新たにわかりました。 この非自明なJ=3/2バンド間の遷移の原因は、アンチペロブスカイトの結晶構造に起因していました。これにより、新たに高スピンJ=3/2のディラック電子を左右円偏光を用いて選択的に励起させることができる原理となります。これまで遷移金属カルコゲナイドやワイル半金属(TaAs)等で光励起による起電力が実験的に報告されており、その手法を用いることで今回私たちが明らかにした光励起も観測されることが期待できます。 また、トポロジカルディラック半金属(Cd3As2など)におけるスピンホール効果(印加電場による無散逸なスピンの流れを誘起する効果)についても研究を実施し、この効果とトポロジカル相との関係を解明しました。これらの研究成果を国際会議での基調講演・招待講演の際で発表いたしました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに、これまでのJ=1/2ディラック電子系における光応答とは異なるJ=3/2ディラック電子系特有の光応答を明らかにすることができたため。また解析した結果初めて光応答がアンチペロブスカイト構造にも起因していることがわかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回明らかにした光励起に伴う光起電力に関して研究し、J=3/2ディラック電子系特有の光輸送現象を示す。
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