2019 Fiscal Year Research-status Report
Experimental study on the anomalous metallic state in quasiperiodic systems
Project/Area Number |
19K14663
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
鈴木 慎太郎 東京理科大学, 基礎工学部材料工学科, 助教 (60837508)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 近似結晶 / 物質探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規Ce系近似結晶・準結晶の探索については主にAu-Ga-Ce系Tsai型近似結晶を対象とした。組成領域の探索を行った結果、1/1近似結晶についてはAu/Ga比および(Au,Ga)/Ce比に対して非常に広い単相領域を持つことが明らかになった。そこで化学的圧力の印加を期待し、これらの系に対し磁化率・比熱測定を行った。しかしながら、いずれの系も2 Kまでの磁化測定では異常を示さず、また0.5 Kまでの比熱測定ではAu/Ga比および(Au,Ga)/Ce比によらずほとんど同じ比熱の温度依存性を示した。さらにこの比熱の振る舞いは先行研究にて報告されていたAg-In-Ce系1/1近似結晶とほぼ同一のものであり、系・組成によらず全く同一の温度依存性を示している。磁場中測定では比熱で見られたピークが高温側へとシフトしていくことから、系はAg-In-Ce系1/1近似結晶と同様にスピングラス状態になっているものと考えられる。これまでTsai型1/1近似結晶系はA6RE系(A:金属,RE:希土類)のAサイトに2種の元素を用いることで物質探索が行われてきた。本研究の対象としたAu-Ga-Ce系はAサイトにAuとGaの2種元素を用いているものとみなせることから、こうした構造が単相領域の広さにつながり、またそれに由来する乱れにより、系のスピングラス化を招いているものと考えられる。 ホウ素の7員環を用いた新規準結晶の探索については、まずRE, Al, Bのアーク溶解を試みたが、系は合金化しなかった。また原料をそのまま高周波溶解し、箔体急冷することも試みたが、系はアモルファス化してしまい、本課題に適合する有意な構造は得られなかった。そのため、大量の母合金を得るための別の手法として、ブリッジマン法を用いるべく、ブリッジマン炉の立ち上げを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ce系近似結晶・準結晶の探索については先に述べた成果の他、Au-Ge-Ce系も発見されており、大きく進展していると考えられる。一方、その物性については系の乱れに由来するスピングラス化が避けられず、何らかの方法でこれを回避しなければならないことまでが明らかになっている状況である。もっとも探索指針の確立には成功しているため、今後の物性測定まで睨んだ物質探索はスムーズに進むものと考えられる。 また、ホウ素系については、母合金の箔体急冷に至るまでが予想以上に困難であったものの、ブリッジマン炉の立ち上げにより母合金の準備が可能となり、本格的な合成が可能となることが期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、Ce系近似結晶・準結晶については、多元素化に伴う乱れの影響をいかに排除するかが課題となる。これまでの研究においては、先行研究であるAu系1/1近似結晶の単相領域が広いことから、その基底状態に対するチューニングが化学圧力効果により容易であることに着目し、Au-Ga-Ce系の選定を行った。しかしながら単相領域が広いということは、非磁性元素に乱れが入りやすく、それにより系の基底状態はスピングラスとなりやすくなってしまう。そのため、本来の目的であるFermi液体や磁性、異常金属状態といった状態の観測がこの方針では難しいと考えられる。今後はこうした構造乱れが少ないと期待される単相領域の狭い系や、あるいは2元系を中心に、その物性をスクリーニング後、詳細に測定することにより研究を進めたく考えている。 また、ホウ素系については、まず巨大合金を安定して手に入れる手法を確立することが箔体急冷に向けた至上命題となるため、ブリッジマン法を中心とした種々の手法を試し、まずはREAlB4の巨大な単結晶あるいは多結晶を作製する。作製した結晶に急冷を施すことにより、YbAlB4と同一の構造を持つ新規準結晶の発見を狙う。アーク溶解に際し、Ybが非常に揮発しやすいことも課題となったため、Ybの代わりに、揮発しづらく、またYbAlB4と同様alpha型とbeta型の両構造を取り得るLuAlB4に焦点を絞り、まずはこれら系と同一の局所構造を持つ新規系の発見を行いたく考えている。
|
Causes of Carryover |
本予算は主にブリッジマン炉の立ち上げに際し必要な真空装置や、合成した試料の空気中での酸化を防ぐための保管設備に用いた。原料やブリッジマン炉のるつぼなど合成に係る消費材に繰り越し額は使用する予定だったが、炉の立ち上げ期間や本格的な測定に移行するための合成を行わなかったことなどから、消費材の運用が少なかったことにより、残予算が次年度繰り越しとなった。今後、合成のために繰り越した予算を用い研究を進める予定である。
|
Research Products
(4 results)