2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of effects of interactions between magnons on magnon condensation and thermal transport in magnetic insulators
Project/Area Number |
19K14664
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
荒川 直也 中央大学, 理工学研究所, 専任研究員 (20736326)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 磁性体 / マグノン / マグノン間相互作用 / 輸送現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、磁性体絶縁体(磁性体)のマグノンの凝縮や熱輸送の性質がマグノン間相互作用によってどのような影響を受けるかを、磁性体の磁気構造の対称性の違いに由来する性質も含めて、明らかにすることを目指す研究です。磁気構造の対称性が異なる磁性体としては、フェリ磁性体や反強磁性体、らせん磁性体を対象としています。その成果により、これまでの解釈の妥当性や限界の解明、既存の問題の解決や今後の研究の指針の提示、マグノン間相互作用があるからこそ実現できる、新しい性質の解明も目指しています。
本年度は、フェリ磁性体のマグノン熱輸送の研究を行いました。具体的には、フェリ磁性体に温度勾配をかけることで生成したスピン流の応答係数を場の理論と線形応答理論を組み合わせた手法で導出し、その応答係数に対するマグノン間相互作用の影響を調べました。また、その影響が他の輸送係数とどのように異なるかを明らかにするため、当初の計画とは異なりますが、温度勾配とは異なる外場(非熱的な外場)で誘起したスピン流の応答係数に対するマグノン間相互作用の影響も解析しました。そして、それら2つの輸送係数に共通する、マグノン間相互作用の影響を見出しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属が変わったことに加えて新型コロナウイルス感染症の蔓延の対応のため、本研究課題以外に時間をかける必要性が想定以上に増えたことが主たる理由です。具体的には、リモートワークのためのネットワーク環境整備(VPNアカウントの登録や設定なども含む)や新しい所属での本研究課題とは別の研究の実施です。それらに加えて、本研究課題に関する研究で、当初の計画では予期していなかった、温度勾配とは異なる外場(非熱的な外場)でつくるスピン流の応答係数の解析や格子振動(フォノン)を媒介とする相互作用の影響との違いの考察(それに関する論文の精読も含む)を行ったことも一因です。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、フェリ磁性体に関する本年度の研究成果を論文としてまとめ、国際誌に投稿します。
次に、温度勾配で誘起したスピン流の応答係数に対するマグノン間相互作用の影響を、フェリ磁性体とは磁気構造の対称性が異なる磁性体(反強磁性体、らせん磁性体)の場合をフェリ磁性体の場合と同様の手法で解析し、対称性の違いに由来する性質や普遍的な性質を明らかにします。また、当初の計画とは異なりますが、熱的な外場の場合と非熱的な外場の場合の性質の類似点や相違点も明らかにするため、フェリ磁性体の研究と同様に、非熱的な外場が誘起するスピン流の応答係数に対するマグノン間相互作用の影響も解明します。そして、それらの性質を実験で検出する方法を考察し、その提案を目指します。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、当初計画していた会議参加のための旅費の支出が大幅に減ったことが主たる理由です。
今年度は本研究課題の最終年度のため、研究成果発表のための会議の参加費や論文出版の費用(論文執筆で使用するソフトの購入も含む)に使用する計画です。
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