2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of effects of interactions between magnons on magnon condensation and thermal transport in magnetic insulators
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19K14664
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
荒川 直也 中央大学, 理工学研究所, 専任研究員 (20736326)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マグノン / スピントロニクス / 磁性体 / マグノン間相互作用 / 輸送現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の最も重要な研究成果は、マグノン間相互作用があるからこそ実現できる新しい性質「バンド間マグノンドラッグ」を解明したことです(Arakawa, Phys. Rev. B 105, 174303 (2022))。
これまでの多くの研究では、マグノン間相互作用の影響は簡単のため無視されていました。本研究課題では、その現状を打破し、様々な種類の磁性絶縁体のマグノン熱輸送の性質に対してマグノン間相互作用がどのような影響を与え、どのような新しい性質を生じさせるのかを解明することを大きな目標の一つとしてきました。
今年度の研究により、フェリ磁性絶縁体のマグノンの輸送現象の3つの輸送係数の温度依存性に対するマグノン間相互作用の影響を線形応答理論と場の理論(Green関数の方法)を組み合わせた手法で理論的に解析し、マグノン間相互作用によるマグノンバンド間の運動量移行が誘起する「バンド間マグノンドラッグ」の存在を予言しました。ここで、解析した3つの輸送係数は、スピンゼーベック係数、マグノン熱伝導度、マグノン伝導度です。相互作用を無視した場合にはそれぞれのバンドごとでマグノンの運動量が保存しますが、マグノン間相互作用が有限になると異なるバンド間の運動量のやりとりが可能になります。そのため、フェリ磁性絶縁体のように多バンド構造を持つ系では、マグノン間相互作用により、あるマグノンが他のマグノンの流れ(マグノンスピン流など)をドラッグすることが可能になります。この「バンド間マグノンドラッグ」は、これまで知られていたドラッグ効果(フォノンドラッグなど)とは本質的に異なる、新しい性質です。特に、通常知られている、金属のマグノンドラッグ(マグノンが電子の流れをドラッグする効果)と異なり、磁性金属だけでなく磁性絶縁体でも可能な性質です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の最大の目的である、マグノン間相互作用があるからこそ実現できる、新しい性質を発見することができているからです。また、1、当初の計画では輸送現象としてマグノン熱輸送だけを想定していましたが、マグノン伝導度のような熱を必要としないマグノン輸送の解析も行い、それに対するマグノン間相互作用の影響を明らかにできていること、2、磁性絶縁体の種類を変えて対称性を変えた場合の解析にすでに着手しており、それに関する成果も近々論文投稿できる状況であることもその理由です。
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Strategy for Future Research Activity |
現在着手している、反強磁性絶縁体のマグノン輸送現象に対するマグノン間相互作用の影響を調べている研究の成果をまとめ、原著論文として国際誌に投稿します。そして、本年度が最終年度のため、本研究計画の総括を行います。
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Causes of Carryover |
最大の理由は、新型コロナウイルスのバンデミックが長引いていて、当初の計画の会議への参加の旅費の支出がなくなったためです。成果発表のための会議の参加費や研究遂行のための消耗品の購入に主に使用し、可能であれば、現地開催の会議への旅費への使用も行う予定です。
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