2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of effects of interactions between magnons on magnon condensation and thermal transport in magnetic insulators
Project/Area Number |
19K14664
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
荒川 直也 中央大学, 理工学研究所, 専任研究員 (20736326)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マグノン / スピントロニクス / 磁性体 / マグノン間相互作用 / 輸送現象 / 磁性絶縁体 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の最も重要な成果は、ノンコリニアな磁性体特有のマグノン間相互作用がマグノン輸送における新しいドラッグ現象を引き起こすことを理論的に予言できたことです(Arakawa, Phys. Rev. B 106, 064306 (2022))。
本研究課題では、これまでの研究で簡単のため無視されてきたマグノン間相互作用がマグノンの熱輸送に与える影響の解明やマグノン間相互作用があるからこそ実現できる性質の予言だけでなく、磁性体の磁気構造の違いがもたらす影響の解明も目指していました。特に、ノンコリニア(非共線的)な磁気構造でのみ実現するマグノン間相互作用の影響の解明は達成目標の一つでした。
今年度の研究では、キャントした反強磁性絶縁体のマグノンの輸送現象を記述する三つの輸送係数の温度依存性に対するマグノン間相互作用の影響を線形応答理論と場の理論(Green関数の方法)を組み合わせた手法で理論的に調べ、ノンコリニアな磁気構造に特有のマグノン間相互作用により、マグノンがマグノンのスピン流や熱流をドラッグする、新しい「マグノンドラッグ」が実現することを予言しました。輸送係数はスピンゼーベック係数とマグノンスピン伝導度、マグノン熱伝導度を対象としました。この「マグノンドラッグ」は、昨年度の研究で予言した、コリニア(共線的)な磁性体であるフェリ磁性絶縁体におけるバンド間マグノンドラッグとは異なり、低温でも無視できない性質です。金属における電子間相互作用の影響も通常は低温で無視できるので、この「マグノンドラッグ」は、低温であっても重要な影響を及ぼす、質的に新しい相互作用効果といえます。また、当初の計画からは修正しましたが、ノンコリニアな磁気構造に特有なマグノン間相互作用がもたらす、磁性体の磁気構造の違いがもたらす、本質的なマグノン間相互作用の影響の相違点を発見することができました。
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Remarks |
webページは、研究成果(Arakawa et al., Comms. Phys. 6, 43 (2023))のプレスリリースです。
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