2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K14666
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
村井 直樹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 博士研究員 (90784223)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超伝導 / 磁性 / フォノン |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は鉄系超伝導体のスピン揺らぎの研究を集中的に行った。特に、ホールドープ型BaFe2As2を対象に、J-PARCのパルス中性子分光装置を用いた非弾性中性子散乱実験を行った。令和元年度に実施した非弾性中性子散乱実験では、超伝導状態のスピン感受率に複雑なピーク構造が現れる事を発見したが、統計精度の問題でスペクトルの詳細な解析は困難であった。その反省を踏まえ、令和2年度は測定条件を再考して再測定を実施した。その結果、ホールドープ型BaFe2As2のスピン感受率は超伝導状態において少なくとも2つのピーク構造を有することを見出した。鉄系超伝導体のような多バンド系においては、その複雑なマルチギャップ構造を反映してスピン感受率に複数のピーク構造が観測され得ることを理論グループとの共同研究を通して指摘した。本研究により、中性子散乱実験を用いて超伝導ギャップ等の電子構造の抽出が可能である事が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度上半期は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に伴う大型実験施設の運転停止により、当初の計画であった放射光X線/中性子散乱実験等が十分に行えなかった。このことから、現在までの進捗状況は"やや遅れている"と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ホールドープ型BaFe2As2を対象にJ-PARCのパルス中性子分光装置を用いた非弾性中性子散乱実験を行い、(1):動的スピン感受率に現れる三次元的変調構造、(2):超伝導状態における2つのピーク構造を観測した。理論グループとの共同研究を通して、(1),(2)はそれぞれ、電子構造の3次元性とマルチギャップ構造を反映した結果であることを突き止めた。しかし、一部のデータは十分な統計性精度で測定がなされておらず、最終的な結論を先送りにしていた。統計精度を高めた追加の中性子散乱実験を行い、令和3年度のなるべく早い時期に論文化を目指したい。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により海外出張や大型施設での実験の機会が失われたため、次年度使用額が生じた。使用計画としては、SPring-8等の大型共用施設への出張旅費や施設利用料を想定している。
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