2019 Fiscal Year Research-status Report
Anharmonic properties of localized vibrations in glasses
Project/Area Number |
19K14670
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水野 英如 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (00776875)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ガラス / アモルファス / フォノン様モード / 局在振動モード / 非調和性 / 配置換え |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ガラスに存在する局在振動モードの非調和性を明らかにし、特にガラスの二準位系との関係性を築くことを目標とする。令和元年度は、局在振動モードを含めたガラスの振動モードを励起させたときに、特に“粒子の配置換え”を伴う非調和性を明らかにした。 過去の研究において、ガラスの調和振動特性、すなわち固有振動モードについての理解は大きく前進した。低周波数域でフォノン様モードに加えて、振動が空間的に局在化した局在振動モードが存在することが確立された。また、高周波数域にいくと、空間的に広がった、乱れた振動状態が存在することが分かっている。本研究では分子シミュレーションを実施し、これらの振動モードそれぞれを励起させたときに、その励起した振動モードが誘起する非調和性を調べた。その結果、励起した振動モードは粒子の局所的な配置換えを発生させることが分かった。このように粒子の配置換えを生じさせるような非調和性は、(完全)結晶には決して存在することはなく、粒子が不規則に配置するガラス特有のものである。 さらに、低い周波数の振動モード程、粒子の配置換えを伴う非調和性はより強くなることが分かった。驚くべきことに、フォノン様モードと局在振動モードで、その非調和性の程度に差がみられなかった。すなわち、調和振動モードがフォノン様振動あるいは局在化振動を示していたとしても、非調和性の領域に入るとそれらの調和振動の性質に関係なく、同程度の配置換えを伴う非調和性を生じさせることが明らかになった。これは、当初の期待に反する注目に値する結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展していると評価する。また、本研究を始める前に期待していた以上の研究成果を出すことができたと考える。 令和元年度の計画は、ガラスの振動モードを励起させてときに、その励起した振動モードの非調和性を明らかにすることであった。この目標は十分に達成でき、研究成果を次の論文にまとめることができた:H. Mizuno, M. Shimada, A. Ikeda, Phys. Rev. Research Vol.2, p.013215 (13pages), 2020。 本研究を実施する前は、局在化振動モードがより強い非調和性を示し、それに対してフォノン様振動モードは弱い非調和性を示すと予想していた。ところが、本研究によってそのような差はなく、両振動モードは同程度の非調和性を示すことが明らかとなった。この結果は、粒子が不規則に凝縮した“ガラス”というものの正体に迫る重要な発見であると考えている。すなわち、調和振動状態の性質に関係なく、同程度の粒子の配置換えを伴う非調和性が生じることは、ガラスの液体的な性質を示唆するものである。ガラスがまさに固体であると同時に、液体的でもあることを示すものである。この結果は、ガラス物性の理解に大きく貢献するものであり、ガラス物性の分野にインパクトを与えることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究ではある一つの調和振動モードに着目し、そのモードを励起させたときの非調和性を明らかにした。しかしながら、実際のガラスでは温度によって絶えず数多くの振動モードが励起している。そのような状況では、励起した振動モードの多体的な効果が生じると予想される。そのような多体的な効果を明らかにすることが次の目標となる。 具体的には、まずは古典的にガラス系に熱を与えて、振動モード群を励起させる分子シミュレーションを実施する。そのときに生じる、(1)振動モード間の相互作用、および(2)粒子の配置換えを伴う非調和性を明らかにしていく。このときに結晶と違いに注目して、結晶とガラスの非調和性の違いを議論することによって、ガラスの非調和性をより明確化していくことを考える。
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