2020 Fiscal Year Research-status Report
ソフトマターの亀裂進展における速度ジャンプのメカニズムの解明
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19K14672
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
作道 直幸 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (50635555)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 速度ジャンプ / 破壊力学 / 可解モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 亀裂進展速度ジャンプ自体の研究 1-a. ゴムの亀裂進展速度ジャンプのメカニズムに関して、数値シミュレーションや実験からの基礎付けを行った研究の原著論文について査読者対応を行った。1-b. 研究の申請書に書いた「粘着テープの剥離における速度ジャンプ」に関して、今年度、粘着テープの剥離と粘弾性体の亀裂進展速度における速度ジャンプの関連を示唆する結果を得た。結果の一部は、高分子学会が主催する招待講演にて発表した。1-c. 生体材料をシート状にした破壊試験において速度ジャンプが起こるか、という他大学と共同研究を行った。結果について原著論文を執筆中である。1-d. 高分子ゲルの亀裂進展挙動について、偏光高速度カメラを用いた破壊挙動解析を進めている。網目の均一性が極めて高い高分子ゲルにおいては、線形弾性破壊力学の予測と非常に良くあう理想的な破壊挙動を見せることがわかった。 2. 高分子ゲルの亀裂進展挙動を研究するために不可欠である、弾性率や浸透圧などの基礎的な物性パラメータに関する研究 2-a. 高分子ゲルにおける「負のエネルギー弾性」を発見した成果について、原著論文をPhys. Rev. X誌から出版した。この成果についてプレスリリースを実施し、webメディア等で広く紹介された。また、招待講演にて発表した。2-b. ゲル化過程の浸透圧を支配する普遍法則を明らかにした成果について、原著論文をPhys. Rev. Lett. 誌から出版した。この成果についてプレスリリースを実施し、webメディア等で広く紹介された。2-c. ゲルの高分子網目の拡散係数に対する混合と弾性の効果を明らかにした成果が、Macromolecules 誌に採択・出版され、雑誌のSupplementary Journal Cover に採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載の通り、本年度は1-aから1-d、2-aから2-cのように7つの方向性の研究を行った。本年度は、原著論文4本が著名な国際誌に掲載された。この内3本は、研究代表者が責任著者である。また、コロナ禍の中、4件の招待講演を含む14件の学会発表を行った。このように、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、今年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、ある程度の在宅勤務を余儀なくされている。シミュレーションや実験を伴う研究を本格的に行うためには、緊急事態宣言が解除される必要があるが、2021年4月末の段階で東京都は3度目の緊急事態宣言が発令されており、五輪開催に伴うコロナ禍の拡大も予想され、予断を許さない状況である。しかしながら、昨年度は論文執筆に専念した結果、原著論文4本が著名な国際誌に掲載された。今年度も昨年度に引き続き、解析計算でできる範囲の研究を進めることと、本年度の研究成果を原著論文にまとめることに専念する。具体的には、二次元正方格子構造における応力集中による破壊の開始条件の研究、生体シート材料における速度ジャンプの研究、高分子ゲルの亀裂進展挙動に関する研究、高分子ゲルの基礎的な物性パラメータの研究、の4つについて、原著論文を執筆する。また、二段階の速度ジャンプを説明する理論モデルを構築することと非線形弾性によるタフ化メカニズムの研究を進める。
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Causes of Carryover |
今年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、参加予定の国際学会および国内学会がオンライン開催となった。それに伴い、旅費を使用する必要性が無くなったために、差額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画については、当初予定していた直接経費の総額500万円に対し、交付額が330万円であったことから、その減額分に充てる予定である。具体的には、執筆した英語原著論文の英文校閲や、国際・国内学会の参加費として使用する。
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