2020 Fiscal Year Research-status Report
蛋白質天然変性領域がもたらす相転移ダイナミクスの構造基盤解析
Project/Area Number |
19K14677
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉村 優一 大阪大学, 蛋白質研究所, 招へい研究員 (70632248)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 核磁気共鳴 / カルボニル13C検出 / 13C‐1H相関スペクトル / multiplicity |
Outline of Annual Research Achievements |
蛋白質の相転移を駆動する天然変性領域(特定の立体構造をとらずに動的に揺動する領域)の動的な構造変化を明らかにするため、核磁気共鳴(NMR)測定手法を改良した。特定の立体構造をもつ蛋白質と比べて、天然変性蛋白質はアミド水素と溶媒との速い化学交換のため、通常のアミド水素検出(15N‐1H相関スペクトル等)による解析は困難である。本研究では、極低温プローブを装着した高感度測定が可能な溶液NMR装置を用いて、カルボニル13C核を直接検出するためのパルスプログラムの修正をおこなった。 カルボニル13C核の直接検出により、化学シフト分散のよい15N‐13C相関スペクトルを取得することが可能になった。残基内および残基間の3次元13Cα‐15N‐13Cスペクトルを測定するパルスプログラムを作成することで、NMR信号の連鎖帰属が可能となった。本測定法の利用により、溶媒との化学交換によりアミド水素検出型の15N‐1H相関スペクトルでは観測されない残基のNMR信号を取得することができた。くわえて、パルスプログラムの改変により、アミド水素の化学シフトおよび溶媒との交換速度を取得できた。これらは、蛋白質の動的な構造変化の観測において役立つと期待される。 上記のほかに、Edited‐HSQC技術を応用することで、1種類の13C‐1H相関NMR測定のみから(1)Asx(D/N)の13Cβ‐1Hβ相関、Glx(E/Q)の13Cγ‐1Hγ相関、グリシン(G)の13Cα‐1Hα相関、(2)G以外のアミノ酸の13Cα‐1Hα相関、(3)芳香族アミノ酸(H/F/Y/W)の13Cβ‐1Hβ相関、(4)(1)から(3)を除く脂肪族13CH2、(5)(1)から(3)を除く脂肪族13CH/13CH3、の5つのスペクトルを同時に得る方法を論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
NMR測定法の実装は成功している。その一方で、蛋白質の相転移を表す相図の作成は完了できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
蛋白質が相転移する条件を体系的に検証して相図を作成する必要がある。
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Causes of Carryover |
(理由)条件検討に時間を要し、一部の実験に遅れが生じている (使用計画)同位体標識試薬、蛋白質精製用カラム等を購入予定
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Research Products
(2 results)