2023 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質天然変性領域がもたらす相転移ダイナミクスの構造基盤解析
Project/Area Number |
19K14677
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉村 優一 大阪大学, 蛋白質研究所, 招へい研究員 (70632248)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 天然変性蛋白質 / 核磁気共鳴 / カルボニル13C |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、細胞内での液液相分離が様々な生理機能の発現において重要な役割を担うことが明らかになってきた。液液相分離には、特定の立体構造をとらずに動的に揺動する天然変性領域をもつ蛋白質が関与している。本研究では、液液相分離を駆動する天然変性領域の動的な構造変化に着目し、それを明らかにするための核磁気共鳴(NMR)測定手法を改良した。通常のアミド水素検出による解析(1H‐15N相関スペクトル等)では、以下の理由によりNMRスペクトルから得られる情報が限定的となる: (1)天然変性蛋白質ではアミド水素と溶媒との速い化学交換により、NMR信号が広幅化する。生理的条件下(37℃、pH7.4付近)では、多くのアミノ酸残基で化学交換速度>100/sとなり、NMR信号を検出できない。 (2)変性した蛋白質は測定核(アミド水素)周辺の環境の磁気的多様性に乏しいため、化学シフトの分散が狭く、化学シフト縮重が解析の妨げとなる。 (3)蛋白質の天然変性領域にはしばしばプロリン残基が豊富に存在するが、プロリン残基にはアミド水素原子がないため、NMR信号が得られない。 上記の問題を解決するために、極低温プローブを装着した高感度測定が可能な溶液NMR装置を用いて、カルボニル13C核の直接検出による測定法を開発した。化学シフト分散のよい15N‐13C相関スペクトルを取得し、残基内および残基間の3次元13Cα‐15N‐13Cスペクトルを測定するパルス系列を作成することでNMR信号の連鎖帰属が可能となった。くわえて、パルス系列の改変により、アミド水素の化学シフトおよび溶媒との交換速度を取得できた。これらは、蛋白質の動的な構造変化の観測において役立つと期待される。
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