2020 Fiscal Year Research-status Report
放射線損傷限界を超える細胞の分子分解能三次元イメージング
Project/Area Number |
19K14678
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
高山 裕貴 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 助教 (40710132)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コヒーレント回折イメージング / 放射線損傷 / 圧縮センシング / トモグラフィー / 位相回復 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、超分子複合体レベルでの細胞構造解析の実現を目指し、少ないX線照射線量での低温コヒーレントX線回折トモグラフィー(CXDT)技術の開発を進めている。今年度は、以下の3課題を進めた。(1) コヒーレントX線の干渉効果を活用した回折シグナルの増強技術として、散乱断面積の大きい金属のマイクロピラーアレイを構築した試料基板の高度化を進めた。FIB加工で製作する際に基板面も薄く金属コーティングされる問題を解決し、光学顕微鏡で透過観察しながら試料粒子をマイクロピラーアレイ内に置くことが可能となった。また、材料やピラーサイズを検討した結果、SPring-8 BL29XULでの実験で過度な回折シグナル増強による検出器の飽和を抑制できた。(2) マイクロピラーアレイを試料粒子周囲に配置する分、散乱体全体のサイズは大きくなり、ダイレクトビームとの重なりによる極小回折角のデータ欠損が位相回復の収束性に強く影響する。波動光学シミュレーションによる検討から、試料ブランクのデータを減算することで試料由来の極小回折角データを部分的に抽出できることを見出し、小角分解能を2倍程度向上することに成功した。(3) 高空間分解能CT再構成に向けて、位相回復解の選定に用いる基準量に理論的な解釈を与えることができた。また、二次元投影像回転軸のソフトウェアアラインメント法を検討した。構造が明確でコントラストレベルが異なる複数の材料試料について評価し、構造強調処理を適用することで空間分解能50 nm以上でのCT再構成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マイクロピラーアレイは供用装置で自作する予定であったが、コロナ禍の影響で供用装置の利用ができず、高度化検討に制限が生じ、研究計画に遅れが生じた。ハード・ソフトの課題と解決方策は整理できており、引き続き計画に沿って研究を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、(1)回折シグナル増強技術と(2)低照射線量トモグラフィー技術の高度化を進めながら真核細胞のCXDT研究を進める。回折シグナル増強用試料基板は、傾斜角が大きくなった際にピラーの重なりにより厚み効果が顕著に生じたため、これを回避する設計とする。CXDT再構成については、初期モデル構築のための二次元投影像位相回復において、並行して開発している動的イメージング技術から新たなアルゴリズムの着想を得ており、良質な初期モデルを構築することで後のCT再構成及び精密化の精度向上を試みる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響でシグナル増強基板の製作が遅れたために生じた。今年度、同基板の製作費に充てる。
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