2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of Atomic Data Infrastructure with Machine Learning
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19K14680
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 恵介 京都大学, 工学研究科, 助教 (10637705)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 原子分子データ / プラズマ分光 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
分光診断に際限なく必要な原子データセットを、機械学習技術により抜本的に効率よく構築することが本研究の目的である。2019年度は、National Institute for Standards and Technology の Atomic Spectra Database に収録されている、多電子原子のエネルギー準位について、機械学習技術を用いた補完・品質評価を行った。 特に、同電子系列と呼ばれる、電子数が同じで核電荷が異なる原子イオンのエネルギー準位が核電荷に対してスムーズな関数になることを利用し、その系列がどの程度連続的に繋がっているかを調べた。その結果、おおよそ5%の確率でデータに統計的には説明できない外れ値があることが明らかになった。そのなかには、過去に行われたデータ評価におけるミスが、30年間以上残っているものもあった。さらに、外れ値があることをみこんだ補完により、データベースに載っていない欠損値の推定も可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた、エネルギー準位という離散値を連続空間に埋め込む技術の開発に難航している。多電子原子のエネルギー準位は一般に、波動関数の混合が大きい。しかし、歴史的にそれらに対しても水素原子的な準位名が割り当てられてきた。そのため、データベースに記載のある準位名だけでは混合の程度がわからないことが明らかになった。それら混合の程度を推定する枠組みが必要であるが、技術的には現状では難しい。
一方で、特に大量エネルギー準位・遷移が存在し、それらの正確な数値計算が難しい多電子原子について、少量の原子データのみからその挙動を推定するモデルの構築を進めることができた。 特に、確率的描像を用いることで、30年以上未解明であった、多電子原子スペクトル線がべき乗分布になることも明らかにすることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.波動関数の混合の程度を推定する枠組みに加え、2.先述した確率的モデリングも進める。 具体的には、以下のように研究を進める予定である。 1.波動関数の混合の程度を推定する枠組みの構築 配置間相互作用と呼ばれる第一原理シミュレーションにおいては、エネルギー準位と波動関数の混合の程度は、ハミルトニアン行列の固有値と固有ベクトルから求められる。ただし第一原理シミュレーションから求まるエネルギー準位の精度は、実験精度に比べて遥かに悪い。本研究では、求まる固有値が実験データを説明するような、ハミルトニアン行列に対する補正を機械学習で求めることを考える。そうすることで、離散値を扱わなくてよくなるほか、レベル交差とよばれる現象にも対応できる。 2.多電子原子の確率的モデリング 多電子原子には、大量のエネルギー準位とその間の遷移がある。本研究では、それらをランダムに近似するモデル化の可能性を探る。それにより、プラズマ中における多電子原子の挙動について新しいモデル化し、複雑すぎると考えられていた多電子原子の挙動をシンプルに理解することを目指す。さらに、多電子原子のエネルギー準位を新規に計測して比較することで、上記モデリングの妥当性も検証する。
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Causes of Carryover |
GPUの低価格化により、機械学習用のワークステーションではなく、汎用のコンピュータでの機械学習が可能になった。 そのため、当初購入予定であったワークステーションを購入する予定であった費用の分、差額が生じた。 本差額は、先述した新規エネルギー準位計測の実験装置購入に充当する。具体的には、超高精度分光システムの構築のための、回折格子の購入に割り当てる。
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