2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of Atomic Data Infrastructure with Machine Learning
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19K14680
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 恵介 京都大学, 工学研究科, 助教 (10637705)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 原子分子データ / プラズマ分光 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
分光診断に際限なく必要な原子データセットを、機械学習技術により抜本的に効率よく構築することが本研究の目的である。2020年度は、National Institute for Standards and Technology の Atomic Spectra Database に収録されているもののいまだ同定がなされていない発光線から、未同定のエネルギー準位を決定した。
通常、量子系のエネルギー準位同定は、2つの準位間のエネルギー差に対応する波長の光が観測されるという性質(Ritzの結合則)から求められる。これまでは第一原理計算との比較によって同定が行われてきたが、多電子原子などの多体量子系の高励起状態では複雑な相互作用により、第一原理計算の誤差が準位間の間隔よりも大きくなり、準位同定に用いることができない。
本研究では、多数の発光線が同一の上準位を共有するという性質を利用し、エネルギー準位を同定する新しい手法を開発した。Ritzの結合則では、特定の準位と特定の発光線の差、もしくは和を取ることでもう一方のエネルギー準位を同定することができるため、既知の準位と発光線のすべての組み合わせの差もしくは和を取ると新しいエネルギー準位である可能性のある候補をリストアップすることができる。誤った組み合わせから求められた準位の候補は規則性を持たないため、当然特定のエネルギーに集中することなくランダムに分布する。一方で、正しい組み合わせによって得られたエネルギーは多くの下準位から同一のエネルギーを有する上準位が得られるはずである。その結果、エネルギー準位同定問題を、外れ値検出という問題に還元できる。実際に1つ目の手法を中性鉄やタングステンに適用し、新たなエネルギー準位を複数個発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、エネルギー準位という離散値を連続空間に埋め込む技術の開発を予定していたが、波動関数の混合が大きいエネルギー準位の電子配置は実態を表さず、それを用いた推定は難しかった。一方で、電子配置によらないエネルギー準位同定法の開発が順調であり、当初の目的を達成しつつある。
さらに2019年度に予定した、プラズマ中の多電子原子ダイナミクスの確率的モデリングが実現でき、複雑すぎると考えられていた多電子原子の挙動をシンプルに理解することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に開発した電子配置に依存しないエネルギー準位同定法をより発展させる。 具体的には、発光線の強度が上準位のエネルギーやプラズマ条件に依存する性質を利用して発光スペクトルの上準位のエネルギーレベルを推定する方法や、原子構造のトポロジーと発光線強度の関連を定量化しエネルギー準位同定に活かす方法の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
6565円という額で購入できる消耗品がなかったので翌年度に繰り越した。2021年度に消耗品の購入に当てる
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