2020 Fiscal Year Research-status Report
照射損傷組織の結晶配向性に着目したダイバータ用タングステンの照射硬化への影響解明
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19K14684
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
東郷 広一 福井大学, 工学部, 班長 (80726589)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | タングステン / TEM内引張「その場」観察法 / 障害物強度因子 / 転位のすべり面 / 照射硬化 / 結晶方位 |
Outline of Annual Research Achievements |
核融合炉用ダイバータ候補材であるタングステンには、中性子照射に伴い、照射硬化(照射脆化)の原因となるキャビティや転位ループなどの照射欠陥が発生する。本研究ではダイバータ材の高寿命化を目指し、中性子照射環境下における照射硬化の結晶方位(結晶配向)依存性を、微細組織における材料硬化メカニズムの観点から解明することを目的とする。中性子照射同様、放射化せずにタングステン中に照射欠陥(キャビティや転位ループ)を生成するヘリウムイオン照射を用い、原子のズレである転位と照射欠陥の相互作用(材料硬化メカニズム)から求められる硬化の度合い(障害物強度因子)が、転位のすべり面(結晶方位)の違いにどのように影響を受けるかを明らかにする。 今年度は純タングステン圧延材から試料を切り出した後、試料中に主にキャビティを発生させるため、ヘリウムイオン照射後に真空熱処理を行い、透過型電子顕微鏡(TEM)内引張「その場」観察法を用いて、室温条件下での転位とキャビティ(2nmサイズ)の相互作用に伴う障害物強度因子と転位のすべり面の関係を調べた。本研究において、{123}面、{110}面、{112}面での転位のすべり運動が観察され、この転位のすべり面の違いに伴い、障害物強度因子の値が異なる障害物強度因子の転位のすべり面依存性が確認された。 次年度は核融合炉の運転温度を考慮し、より高温(500℃以上)でのキャビティ(2nmサイズ)における障害物強度因子の転位のすべり面依存性、並びに温度依存性を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
材料硬化を機構論的に評価することができるTEM内引張「その場」観察法を用い、室温環境下でのタングステンにおけるキャビティの障害物強度因子の定量化、並びに障害物強度因子の転位のすべり面(結晶方位)依存性を確認することができた。キャビティ発生に伴う照射硬化を、転位との相互作用(機構論的観点)から評価することができ、今年度の目標をおおむね達成することができた。しかしコロナウィルス禍における出張の自粛要請等に伴い実験回数が制限されたことから、当初の計画よりも研究の進行が遅れつつある。実験手法自体は既に確立しているため、引き続き実験を継続していく。
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Strategy for Future Research Activity |
室温環境下でのタングステンにおいて、転位のすべり面が複雑に変化する転位のJerky運動が観察され、このJerky運動は実験温度と材料の融点に影響することが示唆された。次年度は実験温度の違い(室温、500℃以上)がタングステンでの転位挙動に与える影響、並びに実験温度や転位のすべり面の違いが障害物強度因子に与える影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、本研究の遂行に必要な物品を安価なもので代用できたこと、並びにヘリウムイオン照射実験が当初の計画から遅れ、一部、今年度中に実施できなかったことから残額が生じた。次年度は今年度生じた残額分も含め、引き続きヘリウムイオン照射実験、並びにTEM内引張「その場」観察の実施に必要な設備使用費、消耗品等の購入費に充てる予定である。
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