2019 Fiscal Year Research-status Report
トカマク炉における三次元非軸対称磁場の裕度評価に向けた統合コード開発
Project/Area Number |
19K14696
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
井上 静雄 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 那珂核融合研究所 先進プラズマ研究部, 研究員(定常) (80757956)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 誤差磁場 / 磁気島 / 平衡制御 / MHD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、トカマク型装置における誤差磁場の許容値を評価するシミュレーションコードを開発し、原型炉の建設コスト削減に貢献することである。プラズマはそれ自身の回転により誤差磁場を遮蔽するが、誤差磁場は装置壁に流れる渦電流やコイルの非軸対称により生じ、その遮蔽はプラズマの非線形的な振る舞いにより生じる。そこで本研究では実形状性を考慮しプラズマ平衡制御をシミュレーションする平衡制御シミュレーター(MECS)と、誤差磁場に対するプラズマ応答を計算する電磁流体(MHD)シミュレーションコード(AEOLUS-IT)を連携計算する統合コードを開発する。初年度は、MECSとAEOLUS-ITそれぞれのコード開発を進めて統合化への見通しを得た。具体的な成果は以下の通りである。 2020年に予定しているMECSコードの大型トカマク装置JT-60SAでの実験検証に向けて、平衡制御ロジックとそれを用いたコントローラーを開発し、JT-60SA実機の制御周期内で動作を確認し、実験に向けた準備を完了し、2019年度後半のプラズマ核融合学会にて口頭発表を行い、隔年開催のIAEA FEC 2020の国内選考を通過した。AEOLUS-ITが予測する誤差磁場に対するプラズマ応答の実験検証を更に進め、多階層的な振る舞いについて実験とシミュレーションで検証を開始した他、これまで難しかった誤差磁場によって放電終盤に生じるロックトモードの安定化手法について、磁気島に共鳴し振動を励起する事で生じるエネルギーのカスケードを応用する手法を着想し、シミュレーションにより安定化効果を確認し、2019年アメリカ物理学会にて口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していたMECSコードの大型トカマク装置JT-60SAでの実験検証に向けた平衡制御ロジックとそれを用いたコントローラーを開発が完了したが、実時間制御系への対応に時間を要し、AEOLUS-ITとMECSコードとの連携フレームワークの開発に十分な時間を取ることができなかった。一方で、AEOLUS-ITが予測する誤差磁場に対するプラズマ応答の実験検証を更に進める事で共著者が論文を出版し、アメリカ物理学会にて口頭発表を実施した他、当初予測しなかった、これまで難しかった誤差磁場によって放電終盤に生じるロックトモードの安定化手法を着想し数値的に安定化効果を実証するなど、AEOLUS-ITコード単体では予想を上回る成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度には、実形状性を考慮しプラズマ平衡制御をシミュレーションする平衡制御シミュレーター(MECS)と、誤差磁場に対するプラズマ応答を計算する電磁流体(MHD)シミュレーションコード(AEOLUS-IT)のそれぞれの開発が完了し、連携計算に向けた準備が完了した。令和2年度は、令和元度予定通り開発が完了した実験検証に向けた平衡制御ロジックとそれを用いたコントローラーの開発や、JT-60SAにおける実験検証、更には新たに発見したロックトモードの安定化手法等の成果を国内外の学会等で発表し、また、論文として出版する。MECSとAEOLUS-ITの統合化は、装置の実形状性(三次元構造)により生じる渦電流やそれが作る磁場のプラズマへの浸透・遮蔽とプラズマ内部に与える影響を、令和元年度に得た安定化効果等をモデル化しオフラインで解析できるように平衡制御コントローラーに実装し、JT-60SA実験において得たプラズマ性能や崩壊との相関を解析し、統合化の妥当性を検証する予定である。
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Causes of Carryover |
令和元年度はコード開発の為のサーバー(Mac Pro 2019)を購入予定であったが、製品発表が年末になり、研究所内の予算執行期限に間に合わなかった為、令和2年度に繰り越した。令和2年度には繰り越した予算でコード開発の為のサーバーを購入予定である。
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