2019 Fiscal Year Research-status Report
プラズマ由来の電界が及ぼす生物学的影響の定量評価およびその機構解明
Project/Area Number |
19K14700
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
奥村 賢直 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (60801149)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電界 / プラズマ / 生体 / 細胞 / タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現在、化学種の影響を中心とした研究成果や製品開発が先行している大気圧プラズマを用いた細胞応答誘導技術において、プラズマ由来の電界が及ぼす生物学的影響の定量評価およびその機構解明である。本研究はプラズマ照射時に細胞にかかる電界の同定、それに応じた電界と細胞の相互作用因子の抽出、および細胞応答機構解明を中心に進め、電界の生物学的効果の定量評価を通したプラズマ医療応用技術の体系的理解により、これまで困難であった化学種および電界の影響を含めた細胞応答誘導技術における作用機序モデルの構築へつなげるものである。 初年度は、高電圧パルス電源やタンパク質の立体配座に及ぼす電界の作用をUV/VIS分光光度計内にてリアルタイムで簡易的に評価する実験系を構築し、水素結合由来および疎水性結合由来の吸光度すなわちタンパク質の二次および三次構造がパルス電界印加時間に伴って変化すること、またその作用が可逆的であることを実験的に明らかにした。続いて、タンパク質溶液に空気誘電体バリア放電を直接照射し、蛍光分光光度法およびSDS-PAGEによってタンパク質の構造およびペプチドの定性分析を行った。その結果、プラズマによるターゲットタンパク質分子の二次・三次構造変化およびフラグメンテーションが生じ、さらにこれらの作用は不可逆的であることを明らかにした。以上から、タンパク質の構造すなわち機能に対し、電界とプラズマが有する作用は全く異なるものであることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はリアルタイム立体配座変化測定を通して電界によるタンパク質の二次・三次構造の可逆的な変化、およびプラズマ照射によるタンパク質分子の不可逆的な断片化を明らかにした。これらの結果は、細胞応答に関係深い生体膜に存在する膜タンパク質への、電界およびプラズマによるシナジー効果の存在が示唆されたものと評価できるため、本研究の目的であるプラズマ由来の電界が及ぼす生物学的影響の定量評価およびその機構解明に向けた大きなヒントになるものと考えられる。以上のことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、所属機関の異動に際する研究環境の変化(主に実験機器や研究協力者等の体制の変化)のため、研究対象としては植物を扱うことで本研究目的を達成したいと考えている。具体的には、電界やプラズマによる生体応答の因子は、シロイヌナズナなどのモデル植物に加えレタスなど複数の植物を実験対象とし、植物形態学や植物生理学的な側面から抽出することとする。これには、高解像度カメラや顕微鏡、SFC/MS/MS、LC/MS/MS、GC/MS等を用いる。なお、本変更に際し、実験対象は植物であり、動物は用いない。また遺伝子組み換え実験は行わない。以上から、"生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書"に基づく"遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律"には抵触しないし、動物実験に関する倫理的問題も生じない。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、当初予定していた次年度および最終年度に行う予定であったタンパク質構造解析と、初年度に行う予定であった生体応答解析を入れ替えて研究を進めたために生じた。次年度使用額である17,695円は、生体応答解析用試薬(具体的には質量分析用特定タンパク質)の購入費に充てる。
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Research Products
(6 results)