2020 Fiscal Year Research-status Report
共形場理論における相対エントロピーとその様々な分野への応用
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19K14716
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宇賀神 知紀 京都大学, 基礎物理学研究所, 特定助教 (00837239)
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Project Period (FY) |
2020-03-01 – 2025-03-31
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Keywords | ブラックホール / 量子情報理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に、ブラックホールにおけるHawking 放射のエントロピーを、最近提案されたアイランド公式を用いて研究した。 アインシュタインの発見した一般相対性理論によれば、ブラックホールに一旦吸い込まれてしまった物体は、二度と吐き出される事はない。しかし、ミクロなスケールの物理を記述する量子論によれば、実はブラックホールが、量子効果によってエネルギーを吐き出していることがわかっている(Haking 放射)。
しかし このHawking 放射のエントロピーを正しく計算する方法はこれまで知られていなかった。実際、このエントロピーを素朴に計算すると、結果が量子論の基本的な性質(ユニタリー性)と矛盾することが知られており、その解決が素粒子理論物理における長年の懸案の一つであった。最近の研究によってこのエントロピーを正しく計算する公式(アイランド公式)が提案され、注目を集めている。
特に我々の住んでいる宇宙におけるブラックホールに、アイランド公式を適用する研究を行った。我々の住んでいる宇宙は膨張しているだけでなく、その膨張速度はどんどん加速していることがわかっている。このような宇宙は数学的にはde Sitter 空間として知られており、元々アイランド公式が提案された反de Sitter 空間とは全く異なる性質を持つ。そこで私は、de Sitter 空間でも成立するようにアイランド公式を拡張する研究を、ペンシルバニア大学のBalasubramanian 氏と、 ブリティッシュコロンビア大学の Kar氏と共同で行った。(またアイランド公式に関連するトピックの研究をBalasubramanian氏のグループと共同で行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度行ったアイランド公式の研究によって、ブラックホールと量子情報理論との関係についてのさらなる深い理解考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ブラックホールの量子情報的側面のさらに深い理解のために、アイランド公式の精密化に向けた研究を行う。ブラックホールとホーキング放射の両方に重力が作用している状況に対応するアイランド公式を理解することが重要である、と考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって海外出張ができなかった為
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Research Products
(8 results)