2019 Fiscal Year Research-status Report
重力波データ解析とディープラーニング型ノイズ除去の融合による重力理論検証の新展開
Project/Area Number |
19K14717
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Research Institution | Nagaoka National College of Technology |
Principal Investigator |
酒井 一樹 長岡工業高等専門学校, 電子制御工学科, 助教 (40824298)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 重力波 / ディープラーニング / ノイズ除去 |
Outline of Annual Research Achievements |
ディープラーニング型ノイズ除去と重力波データ解析の融合の第一ステップとして,ティープラーニングの一種であり,時系列データ解析に強みを持つと言われるリカレントニューラルネットワークを用いたノイズ除去モデルの構築を行った。具体的にはSequence to Sequenceモデルという,時系列信号を入力および出力として扱えるようなモデルを土台にしたモデルを構築した。対象としては,本研究課題の目的である重力理論検証へと展開していくことを前提として,重力理論検証の際に重要となる連星ブラックホール合体重力波のリングダウン部分に注目した。結果として,未知の検証用データについてノイズを除去した波形を出力するようなネットワークの構築に成功した。 発展として,連星ブラックホール合体重力波の全体の波形(IMR波形)に対するノイズ除去性能の評価にも取り組んだ。Effective-One-Body法によって生成したIMR波形に対して,advanced LIGOのデザイン感度に基づいて生成したノイズを加えたものを学習用データとし,未知の検証用データについてノイズを除去したIMR波形を出力するようなネットワークの構築に成功した。 一方で,学習を深めすぎると,学習用データに過適合してしまうという傾向も知ることができた。過適合を抑えるために,学習用データに加えるノイズを学習が進む途中で変更するといった方策を検討し,過適合を提言する効果があることも明らかにできた。 また,ディープラーニングによるノイズ除去に関する研究として,デノイジングオートエンコーダを直列化・並列化した際にノイズ除去性能がどのように変化するかといった研究や,重力理論の検証に関する研究として,リングダウン重力波の解析に主眼を置いた際の検出器の最適なアップグレードプランを検討するといった研究にも取り組み,周辺分野における知見を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は計画通りにノイズ除去コードの開発およびGPU搭載解析用サーバの環境構築とSimulation波形とノイズデータの用意についてが完了し,実際に開発したコードを用いたシミュレーションを実施することができた。計画通りに順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度はコード開発およびシミュレーションによる評価まで完了した。その中で明らかになった課題として,学習データに対する過適合が発生してしまうというものがあった。次年度はこの課題を中心に考え,ディープラーニングの別な構成を検討したり,学習データの作り方を検討したりというフェーズに入る。 特にニューラルネットワークで直接ノイズ除去波形を出力させるのではなく,帯域制御フィルターを最適に構築させ,そのフィルターを使ってノイズ除去を行うという方式が最も過適合の根本的解決に向いていると考えている。今後はそのコード開発から始め,昨年度と同様の評価および実観測データでの評価を行っていく。
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Causes of Carryover |
本研究の要となる解析用のGPU搭載計算サーバの購入にあたっては,計算サーバ本体とGPU機器,そしてハードディスクという3つの要素がある。当初計画では計算サーバ本体とGPU機器を初年度に購入予定であったが,GPU機器の購入は次年度以降に回した方がコストが抑えられるという事実があり,かつ初年度はコード開発および簡単なシミュレーションのみであるから,GPUが1枚あれば問題なく研究を進めることができると判断し,GPU機器の本格的な購入を次年度に回すことにした。予算を合算して,GPU機器やハードディスク等の次年度の研究遂行に必要な拡張部品購入にあてる。
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