2020 Fiscal Year Research-status Report
Study of black hole-neutron star binary mergers in the era of multi-messenger astronomy
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19K14720
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久徳 浩太郎 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30757125)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 宇宙物理 / 重力波 / 相対論 / ブラックホール / 中性子星 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に行った低質量ブラックホール・中性子星連星合体の系統的な計算結果を共同研究者とともにまとめ、公表した。合体後に残る物質の状態遷移を調べる上で、新たにエネルギー・比角運動量(質量あたりの角運動量)の相図を用いる手法を開発し、これが有用であることを提唱した。一例として、合体時に力学的に放出される物質とその後に降着円盤に落ちてくる物質とは、ともにブラックホールからの距離が等しい軌道で生成されると解釈できることを示した。また、この研究で低質量ブラックホール・中性子星連星合体では放出される物質の大半が降着円盤からの円盤風によって賄われることがほぼ確実となったことにも触発され、共同研究者とともにブラックホールを取り巻く降着円盤からの粘性駆動風を系統的に調べた。ブラックホールの質量としては先述の研究の延長線上にある低質量に着目しつつ、宇宙物理学的に典型的と期待される重めのブラックホールも計算し、共通点や相違点を調べた。その結果、典型的には降着円盤の15%-30%程度が、光速度の5%-10%程度でおおよそ等方的に放出されることがわかった。さらに、極めて粘性が大きくなる場合を除けば、円盤風が駆動されるまでに元となった中性子星の中性子過剰が解消され、合成される元素も比較的軽いr過程元素が主となって、物質の不透明度を上げるランタノイドはあまり生成されないであろうことを明らかにした。重力波についても、非物理的な軌道離心率を低減することで過去の研究よりも高精度化した波形の系統的計算を進め、技術報告を兼ねて初期的な成果を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度のGW190425検出によって既に研究成果が応用されていることに加え、共同研究者に恵まれ低質量連星合体や降着円盤風の系統的な調査が予定より迅速に進行したため。
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Strategy for Future Research Activity |
LIGOやVirgoといった重力波検出器がまだしばらく稼働を控え、直近では観測結果が出てこなくなるであろうことに鑑み、長期的視野に立って高精度重力波の系統的計算を進めるとともに、磁場・ニュートリノを取り入れた連星合体および合体後に残る天体の長時間計算を進める。研究課題の中核である連星中性子星との峻別のため、連星中性子星の計算も並行して進めることを検討している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍にあって一切の出張が取りやめになり、また大学への立ち入りも限定されたものとなって外部の業者を入れた大規模な物品調達をするのも時節に合わないと判断したため。直接的に研究への悪影響があったわけではないが、目に見えない形で損害は蓄積している。
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Research Products
(15 results)