2019 Fiscal Year Research-status Report
量子エンタングルメントの視点からのホログラフィック双対性の研究
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19K14721
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
芝 暢郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 博士研究員 (20782882)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 場の理論 / 量子情報 / 量子エンタングルメント / ゲージ重力対応 / 素粒子論 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子重力理論の有力候補である超弦理論において量子重力に関する興味深い予想がなされている。それは「ホログラフィック双対性」というもので、「ある次元における量子重力理論とより低い次元の重力を含まない場の理論の間に完全な対応関係がある」という予想である。この双対性はAdS/CFT対応として超弦理論において成立している。 本研究の目的は、場の量子論のエンタングルメント(量子もつれ)という視点から、量子重力理論の有力候補である超弦理論において重要な役割を果たすホログラフィック双対性についての理解を深め、量子重力の性質を解明することである。今年度はこのテーマについて1本の論文のプレプリントを発表し学術雑誌に投稿中である。また研究成果を学会や国際研究会で発表した。 場の量子論における相互情報量について研究した。相互情報量とはエンタングルメントエントロピーからつくられる量子情報理論における重要な量である。エンタングルメントエントロピーが1つの部分系と他の部分系の間のエンタングルメントの度合いを測るのに対して、相互情報量は2つの部分系間の相関を測る量である。自由スカラー場理論において、2つの遠く離れた領域間の相互情報量の新しい計算方法を開発し、この相互情報量について新しい性質を発見した。この計算方法は特に数値計算に適している。従来の方法では相互情報量を直接数値計算で計算することはできず、まずエンタングルメントエントロピーを計算しそれから相互情報量を計算していたので計算量が多かった。今回新しく開発した計算方法を使うと相互情報量を直接数値計算で計算することができるので従来の方法に比べて計算量を大幅に減らすことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
場の量子論におけるエンタングルメントについての解析が順調に行われているため。場の量子論における相互情報量は、ホログラフィック双対性を使いエンタングルメントエントロピーを計算するホログラフィックエンタングルメントエントロピーの量子補正に対応しており、ホログラフィック双対性の研究でも重要である。しかし場の量子論における相互情報量は計算が困難で、解析的な計算は共形場理論で2つの部分系が球の場合などのごく限られた例でしか行うことができない。共形場理論でも2つの部分系が球の場合以外は共形対称性が使えず解析的な計算は不可能であり数値計算が必要になる。また質量のある自由スカラー場では共形対称性が無いので2つの部分系が球の場合でも解析的な計算は不可能である。よって、場の量子論における相互情報量の性質について詳しく調べるには数値計算が必要である。今回開発した新しい計算方法は従来の方法に比べて計算量を大幅に減らすことができるので、様々な場合での場の量子論における相互情報量の性質を調べるのに大いに役立つので重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
場の量子論における相互情報量は質量ゼロの自由スカラー場の場合でも2つの部分系が球の場合以外はあまり調べられておらず、部分系の形を変化させたときに相互情報量がどのように変化するのかという基本的なことも分かっていない。今回開発した計算方法を使い、部分系の形を変化させたとき相互情報量の変化を数値計算により調べて基本的な性質を明らかにする。部分系の形への依存性はエンタングルメントエントロピーでは研究されており、場の量子論の重要な情報を持っている場合があることが知られている。相互情報量についての部分系の形への依存性についても、場の量子論の重要な情報を持っているのかどうかを調べるのは興味深い問題である。 また今回開発した相互情報量の計算方法をエンタングルメントネガティビティなどの他の量子情報的な量にも一般化できないかも調べていく。
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Causes of Carryover |
物品費で購入するもので丁度の金額の物がなかったので次年度使用額が生じた。使用計画としては物品購入に使う計画である。
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Research Products
(3 results)