2020 Fiscal Year Annual Research Report
発光フィルムを用いた極低バックグラウンド化技術の開発
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19K14727
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
家城 斉 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 特任助教(研究) (70826940)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シンチレーター / 波形弁別 / 散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の観測を目指している。観測感度を制限している主たる原因は背景事象が多いことである。本研究は検出器に混入する不純物に由来する背景事象をターゲットとして、発光フィルムを用いた低減方法の開発を行った。特にフィルムの実用に向けて、フィルムがキセノンを保持できることの検証と背景事象の同定方法の開発に注力した。 フィルムはバルーン状に成形してキセノンを入れる容器として使うため、高いキセノンガスバリア性を持つことが実用の大前提である。キセノンの透過率を測るための検出器を製作し、ガスクロマトグラフを用いた測定からフィルムはキセノンを有意に透過しないことを確かめた。本年度はセットアップの改良と成形する過程でフィルムが溶接されることを考慮したサンプルの測定を行った。 本研究が低減を目指すのは214Biの崩壊と、212Bi-212Poの連続する崩壊である。214Biの崩壊は現状3番目に寄与が大きい背景事象で、発光フィルムを実用できれば即座に低減することが可能になる。212Bi-212Poの崩壊に対しては、発光フィルムと液体シンチレーターの発光の時間分布の違いを抽出することによってフィルム上の212Bi-212Poの崩壊とシンチレーター内の信号事象の弁別を試みた。本番の検出器を用いた検証は不可能であるため、シミュレーション上に検出器を再構成し、光学パラメーターを入力して弁別効率を調べた。バイアルを用いた測定において、フィルムとシンチレーター波形の違いが明確に観測できており、フィルムの発光がより遅い成分を持つことがわかった。この特徴を抽出できるようにフィッティングパラメータを定義し、事象選別条件を最適化した。本番の検出器は十数メートル規模であり、光が伝搬する過程で散乱等が起こり、発光スペクトルに深刻な歪みを生じるため、これを考慮すべく散乱確率を実測した。
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