2020 Fiscal Year Research-status Report
高精度炭素14測定法の開発による宇宙線異常増加現象の研究
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19K14728
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
森谷 透 山形大学, 理学部, 助手 (40732392)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射性炭素年代測定 / 加速器質量分析 / 炭素14 / 太陽活動の11年周期 / 突発的宇宙線急増現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
銀河系から地球に飛来する宇宙線のうち数十GeV 以下のエネルギーのものは太陽圏内において太陽磁場の変調を受ける。そのため地球における宇宙線強度の変動には、太陽活動の基本周期である11年周期のほか、太陽圏磁場の大規模構造の変化が反映される。そのほか、太陽フレアや超新星等の高エネルギー現象でも、突発的な宇宙線強度の増加が生じる。地球に飛来した宇宙線は大気中で核破砕反応を起こし炭素14(14C)を生成する。14Cは二酸化炭素として光合成により樹木に吸収される。従って、樹木年輪中の14Cの濃度は、その年輪が形成された年の宇宙線強度変動を反映するため、過去の太陽系、地球環境を調べる上で重要な情報となる。 近年、加速器質量分析装置(AMS)を用いた樹木単年輪中に含まれる14C濃度の高感度測定から、太陽活動が極端に低下した極小期と呼ばれる時期が度々存在していたことが明らかになってきた。17世紀に発生したマウンダー極小期では、地球環境にも多大な影響を及ぼしたことが知られており、過去に発生した他の極小期の太陽活動を詳細に調べることが、今後の極小期発生の予測を行う上で重要である。本研究では、山形大学に導入したAMS装置を用いて、古木1年輪毎の14C濃度を高精度に測定し、過去の宇宙線強度変動及び太陽活動の周期依存性を調べることを目的とする。 青森県下北半島で発見された下北埋没木(樹種:アスナロ, 年輪年代:西暦1329-1450年)について、西暦1368-1420年の53年輪を1年輪毎に14C濃度を測定し、シュペーラー極小期が始まる2サイクル前から11年周期が伸びていることを明らかにした。この結果は査読付き論文として発表した(Moriya et al., RIOCARBON, 61 (2019), 1749-1754)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
黒点観測が行われる前の太陽活動の変動を調べるためには、年輪中に含まれる14C濃度を測定し、当時の宇宙線強度変動を調べることが非常に有効である。Eddyら(Science, 1976)による古木年輪試料の14C濃度測定によって、マウンダー極小期の過去にも、シュペーラー極小期(西暦1416-1534年)などが発生していたことが示された。Miyaharaら(Nature Scientific Reports, 2021)は、マウンダー極小期について、室生寺試料や伊勢神宮試料の1年輪毎の14C濃度測定を行い、極小期発生前における太陽活動の11年周期が3サイクル前から延びていたことを示し、シュワーベサイクルの変化が極小期発生の指標となることが示唆された。したがって、過去に発生した他の極小期の太陽活動を詳細に調べることが、今後の極小期発生の予測を行う上で重要である。しかし、マウンダー極小期以外の極小期について、極小期発生前の11年周期に対する研究は行われていない。従って、本研究ではシュペーラー極小期(西暦1416-1534年)に着目し、青森県下北半島で発見された下北埋没木(樹種:アスナロ, 年輪年代:西暦1329-1450年)について、西暦1368-1420年の53年輪を1年輪毎にセルロース抽出し、14C濃度を測定した。そして、シュペーラー極小期開始前後の太陽活動の11年周期をさらに詳細に調べるため、14C濃度の測定を行う年輪年代を広げる計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
青森県下北半島で発見された下北埋没木(樹種:アスナロ, 年輪年代:西暦1329-1450年)について、シュペーラー極小期開始前と開始直後の太陽活動の11年周期の変動をさらに詳細に調べるため、西暦1360-1430年の70年輪を1年輪ごとに14C濃度の測定を進めている。 これらの試料は、まず1年輪ごとに剥離し、アセトン・ヘキサンを用いた超音波洗浄により樹脂を除去する。次に、次亜塩素酸ナトリウムと塩酸を用いた漂白により、リグニンを除去する。その後、濃アルカリ処理によりヘミセルロースの除去を行い、α-セルロースを抽出する。α-セルロースに含まれる14Cは年輪間を移動しないため、単年輪毎の14C濃度測定において重要な前処理法である。 抽出された1年輪毎のセルロース試料は、元素分析計(EA)、同位体比質量分析計(IRMS)、自動ガラス真空ラインで構成される自動グラファイト作製装置を用いてグラファイト化を行う。1年輪毎の試料の炭素量が1mgとなるように秤量した試料を、元素分析装置で燃焼し二酸化炭素化する。自動ガラス真空ラインで液体窒素を用いて二酸化炭素を自動回収し、鉄を触媒とした水素還元反応(CO2+2H2→C+2H2O)によってグラファイト精製を行う。同じく14C濃度の分かった標準試料であるOXII (SRM4990C, NIST)やC6 (IAEA)、14C濃度がほぼ0のバックグラウンド試料であるC1 (IAEA)についてもグラファイト化を行う。その後、最大40個セット可能なAMS測定専用の回転ホイールにカソードをセットし、14C濃度測定を行う予定である。
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Research Products
(1 results)