2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of large arrays of superconducting detector for millimeter and sub-millimeter wave observation
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19K14736
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木内 健司 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (00791071)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超伝導検出器 / ミリ波・サブミリ波 / フォトリソグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の予定どおり大面積基板を用いた超伝導力学的インダクタンス検出器 Microwave Kinetic Inductance Detectors (MKIDs) を設計、作製した。 直径8インチ(200 mm)の基板で作製したMKIDsは、申請者が知る限り世界最大サイズのウエハ上に作製されたMKIDsである。現在、宇宙背景放射の観測に用いられている異なるタイプの超伝導検出器(超伝導転移端センサ、TES)では、直径6インチ (150mm) のシリコンウエハが用いられており、8インチ基板ではウエハあたりの素子数を大幅に増加できる。また、実績のある直径6インチのシリコンウエハでも同様にMKIDsを作製した。超伝導体としてアルミニウムを用いた。おおよそ90 GHz(波長3 mm)以上の周波数のミリ波・マイクロ波を検出可能である。 作製した素子の特性を希釈冷凍機を用いた冷却測定系で評価した。6インチ基板、8インチ基板双方に作製したMKIDsにおいて、予定した応答を示すことが確認できた。6インチ基板のMKIDsにおいて、高い歩留まりが得られた。また、信号に対する応答を調べるため、動作温度を50 mK から500 mKまでの温度域で変化させ、予定通りの応答性を得られた。8インチ基板のMKIDsでは、特に感度を左右する超伝導共振器の品質因子が6インチに比べて大きくばらついていた。これは、ウエハや使用したアルミの純度が6インチMKIDsにくらべ8インチMKIDsのほうが低いため、チップ内で不純物濃度の高い場所が存在し品質を低下させてることが原因と考えられる。解決法として、高純度8インチウエハを入手できる事を確認し、アルミについても少なくとも6インチ基板と同等以上の純度を有するアルミを用いることで改善ができると期待される。 これらの結果はまとめて低温検出器学会 Low Temperature Detector 18にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、大面積ウエハを用いた超伝導検出器を設計・試作した。希釈冷凍機を用いた低温測定系でその特性を評価することができた。初めて試作した大面積ウエハを用いた超伝導検出器MKIDsは当初の予定どおりの特性を示し、特に6インチウエハを用いた素子からは良好な歩留まりが得られた。8インチウエハを用いた素子についても特性は6インチより劣るものの、世界最大級のウエハに作成された超伝導検出器として意義があり、改善点は明らかである。これらの成果はすでに国際学会 Low Temperature Detector会議にて報告し、プロシーディングスも受理されている。 また、次回の試作では高い超伝導転移温度(Tc = 9K)を有するニオブと、低い超伝導転移温度(Tc = 1.2K)を有するアルミニウムを組み合わせたハイブリッド素子を作製することで大幅に感度向上とノイズ低減が可能である。これに向けて異なるタイプの超伝導素子SQUIDの作製で実績のあるアメリカSeeQC社において高品質のニオブおよびアルミニウムを堆積する契約し、すでにニオブ、アルミの2層が堆積されたシリコンウエハが準備済みである。 これらの事から、当初の予定どおり順調に研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の結果から、8インチ基板、6インチ基板の双方においてMKIDsを作製可能なことを示した。2020年度以降はコスト面と、異なるタイプの超伝導検出器との比較がしやすいことなども踏まえて6インチ基板での開発を優先的に行うことを予定している。 2020年度は、2019年度に作製した高品質のニオブおよびアルミを堆積させたシリコン基板を用いて、2つの異なる超伝導転移温度の超伝導体を組み合わせたハイブリッドMKIDs素子を作製する。ハイブリッドMKIDsの設計においては、検出器となる共振器部の幾何学的な構造を最適化することにより低周波側で支配的となる1/fノイズの抑制を試みる。合わせて、片偏波の検出を可能とするアンテナを配したアンテナ結合型MKIDsを設計し、同時に試作することを予定している。 測定系では、黒体光源を用いた校正装置を開発中でありこれを開発することで、作製したアンテナ結合型MKIDsの光学応答を測定する見込みである。 2019年度の暗環境での試験結果、2020年度の光学応答試験の結果を踏まえて、2021年度の試作に向けたシミュレーションを行い本研究の最終的なデザインを策定する見込みである。
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Causes of Carryover |
当初から予定していた高い超伝導転移温度を有するニオブと、アルミニウムを組み合わせたハイブリッド型MKIDsの作製に向けて、当初予定より高い品質のニオブ薄膜を入手するためアメリカのSeeQC社と契約を結んだ。この過程において契約の詳細を確認するために時間を要した。これによって、遅れが発生したが当初予定より高品質の超伝導薄膜を安定的に入手する事が可能となり、今後より良い素子の作製が期待されるとともに、開発スピードの加速が見込める。また、その際にSeeQC社に超伝導検出器の作製も含め依頼することを検討したが、本研究で開発する検出器が輸出規定等に該当するか確認をおこなったため、この作業にも時間を要した。結果としては、薄膜を堆積した基板を導入し、加工を国内で行う決定をしたため今後この問題は発生しない。 使用計画としては、以前の計画を維持し2020年度の初期に予定していた物品の購入及び作業を完了することを予定している。
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Research Products
(1 results)