2021 Fiscal Year Research-status Report
暗黒物質探査に特化した究極の電子飛跡型コンプトンカメラの開発
Project/Area Number |
19K14743
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
加賀谷 美佳 仙台高等専門学校, 総合工学科, 助教 (10783467)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 電子飛跡検出型コンプトンカメラ / Sub-MeVガンマ線 / SOIピクセル半導体検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、暗黒物質探査を目的とし、sub-MeV ガンマ線観測を高感度で実現するためのガンマ線検出器の開発を行っている。令和3年度では、コンプトン再構成を行う解析プログラムを作成し、これまで測定で得た実測のデータやGeant4シミュレーションのデータを用いて解析を行った。古典的なコンプトンカメラとしての解析結果はリング状に線源の位置を特定するしかできないが、電子の反跳方向の情報を利用して、電子飛跡検出型コンプトンカメラとして解析した場合には、線源の位置を1点に定めることができた(散乱角90度で反跳電子が検出面にそっせ走る場合)。また、反跳角(電子の反跳方向と散乱ガンマ線の散乱方向の間の角度)を用いてイベントセレクションが可能で、電子の反跳方向を誤って推定したイベントなどアクシデンタルイベントを排除することができた。再構成したガンマ線画像については、角度分解能を評価した。電子飛跡検出型コンプトンカメラの角度分解能は Angular Resolution Measure (ARM) と Scatter Plane Deviation (SPD) を評価した。 ARM は散乱角によらずほぼ一定の値で約15度(FWHM)、SPDは散乱角が小さくなると電子飛跡が短くなり反跳方向が捉えにくくなるため、SPDが悪くなることが明らかになった(度~度)。また、現在のプロトタイプでは、傾斜角が小さい場合(素子の厚さ方向に電子が反跳した場合)の反跳方向の推定が難しいということが明らかになり、今後の開発の課題を洗い出すことができた。さらに、令和3年度では電子飛跡検出コンプトンカメラに用いるピクセル半導体検出器の素子の設計も行った。令和4年度に素子が完成予定であり、今後評価試験を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度では素子を設計する機会があったため、予定を変更して素子設計を行った。素子設計はKEKで実施している、MPWランという様々な研究機関および企業との合同での製作となるため、そちらのスケジュールを優先した。素子の設計は本研究では当初予定していなかったが、本研究で目指す電子飛跡型コンプトンカメラに実装する素子の設計を行うことができた。素子を評価するためのサブボードの製作については、昨今の社会情勢により部品が不足している状況のため、研究期間を延長し、R3年度からR4年度へ変更した。ただし、部品不足が解消しないため、代替品の利用を検討しながら進める予定である。予定は変更したものの、電子飛跡検出型コンプトンカメラの開発としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度で設計したピクセル半導体検出器の素子の評価を行う。まず、読み出しボードと素子を接続するためのサブボードを設計・製作する。昨今の社会情勢の影響により、サブボードを製作するための部品が足りなくなっているため、代替品の選定も含めて行わなければいけない可能性がある。部品の調達状況によっては、サブボードの開発時期が遅れる可能性があるが、少なくとも令和4年度前半にはサブボードを製作できるように進めたいと考えている。製作後、サブボードの評価や動作確認行う。また、読み出しボードにロードするFPGAプログラムの改良を行う必要がある。これらの測定試験の環境が整ったら、エネルギー分解能や完全空乏化する電圧値の確認など、素子の基礎性能の評価を行う。その後、電子飛跡の検出性能について評価を行う。これまでのプロトタイプで用いたピクセル半導体検出器との比較を行い、今後の素子設計への改善点を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
令和3年度では、素子設計を行う機会があったため素子設計を行ったが、本研究の予算では素子開発の費用が不足するため、研究協力先の予算で素子設計を行った。こちらでは素子の評価を行う際に必要なサブボードの開発を令和3年度で行う予定だったが、部品不足等により、研究期間を延長し、令和4年度での製作に変更した。そのため、次年度使用額が生じている。また、新型コロナウィルス感染症の影響で、予定していた国際会議や学会等がオンライン開催になるなど、海外渡航の予定が変更になったことも理由の1つである。旅費については、国際会議、国内学会ともに令和4年度もオンライン開催がほとんどであると予想されるため、使用しない旅費に関してはサブボード開発およびそれに必要な環境を整えるなどの用途に変更することを予定している。
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Research Products
(2 results)