2019 Fiscal Year Research-status Report
44Ti専用硬X線望遠鏡で明らかにする銀河系内陽電子の起源
Project/Area Number |
19K14749
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐藤 寿紀 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (60825975)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 硬X線望遠鏡 / Ia型超新星 / 崩壊γ線 / 銀河系内陽電子起源 / 超新星残骸 / 元素合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、銀河系内陽電子起源の有力候補として考えられているIa型超新星(Double Detonation model)の観測的証拠を掴むための観測機器の開発と観測研究を行なっている。Ia型超新星モデルの中でも、厚いHe外層の核燃焼の衝撃波で白色矮星の爆発を誘発するタイプのIa型超新星では、その外層の核燃焼時に大量の44Tiが合成されると考えられており、その崩壊時に放出される陽電子が我々の銀河内で供給されている可能性がある。つまり、Ia型超新星で44Tiが合成されている現場を捉えられれば、このIa型超新星の陽電子起源の最も強い証拠になる。 我々は、この44Ti崩壊γ線(68 keV, 78 keV)の観測精度の飛躍的向上のため、ニューハンプシャー大やNASAと協力し、γ線TESカロリメータと硬X線望遠鏡を組み合わせた気球実験計画を進めている。今年度は米国の気球計画にプロポーザルを提出したが、未採択となったため、次回に向け再度提案書を作成している。硬X線望遠鏡の開発に関しては、多層膜研究をNASA/GSFCで開始した。Ni コーティングを可能にするため、新たなスパッタ装置を導入し、現在その立ち上げ作業を行なっており、次の年度から実際に膜付け研究を行う予定である。 観測研究に関しては、Ia型超新星の残骸(ケプラーの超新星残骸)の膨張速度を Chandra 衛星のグレーティング観測で測定し、その三次元構造に迫った(Matthew et al. 2020, ApJ)。加えて、Ia型超新星の残骸の構造と超新星シミュレーションの構造を直接比較できる手法を開発した(Sato et al. 2019, ApJ)。これらの構造研究の他にも、超新星残骸内の元素組成に着目し、その爆発機構へ迫る研究を行なった(Sato et al. 2020a,b)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
気球プロポーザルは未採択であったものの、開発研究に関しては計画通りに進んでいる。観測研究に関しては、予定していたよりも多くの成果を残す事ができた(年度内に筆頭査読論文3本、共著論文2本、国際会議招待講演1件)。論文のみならず、成果は Chandra Press Office からも2件リリースされ、注目度も高いものとなった。開発研究は順調に進められている一方、観測研究面では期待以上の進展があったため、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
この気球計画遂行に向けた予算の獲得を目指し、再度プロポーザルを提出する。望遠鏡開発に関しては、現在立ち上げ中のスパッタ装置を用いて、実際に膜付け研究を開始する。観測研究に関しては、本研究課題に関連する論文を執筆中であるため、その出版までを行う。
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Research Products
(10 results)