2020 Fiscal Year Research-status Report
陽子過剰核の精密質量測定に向けたビーム透過型ガスセルの開発
Project/Area Number |
19K14750
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
木村 創大 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 特別研究員 (10827348)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ガスセル / 多重反射型飛行時間式質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で開発を進めているビーム透過型ガスセルについて当初の研究計画では理化学研究所仁科加速器科学研究センターに新規に設置されたガス充填型反跳核分離装置GARIS-IIIの焦点面に設置する予定であった。しかしGARIS-IIIを使用する他の実験との兼ね合いから必要なマシンタイムの確保が困難となりビーム透過型ガスセルの設置場所を同センターの超電導RIビーム生成分離装置BigRIPSに変更することとした。この変更によって本研究で最終的に質量測定を目指す陽子過剰核の生成方法が変わるがビーム透過型ガスセルの必要性は変わらない。 BigRIPS Zero-degreeコースにおいて同センター低速RIビーム生成装置開発(SLOWRI)チームが多重反射型飛行時間式質量分析器(MRTOF)およびそのためのガスセルから構成される測定系の整備を進めており、そのガスセルとして本研究で開発しているビーム透過型ガスセルを採用することとなった。ビーム透過型ガスセルの開発・整備はSLOWRIチームの協力の下行った。アルカリイオン源を用いたオフライン試験の後、不安定核ビームを使用したオンライン試験を行った。オンライン試験はBigRIPSでの核分光実験で使用した不安定核ビームを再利用するパラサイト実験の形で行い、結果、約70核種ついてビーム透過型ガスセルからの引き出しおよびMRTOFによる質量測定に成功した。測定に成功した核種のうち3核種については本オンライン試験で世界で初めてそれらの質量値を実験的に決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ビーム透過型ガスセルの開発については多少の遅れはあったが概ね順調であるとあると言える。しかし使用する実験設備をGARIS-IIIからBigRIPSに変更したため新規に実験プロポーザルを実験課題採択委員会に提出する必要があり最低でも1年ほど実験が遅れることが予想されるためである。
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Strategy for Future Research Activity |
ビーム透過型ガスセルのオンライン試験は成功裏に終了したが引き出し効率やイオンの価数の問題、またMRTOFまで含めた測定系全体についても依然開発事項が残っておりこれらに関する研究を進めて行く。BigRIPSに設置したもの以外にも低温ヘリウムガスセルとMRTOFから構成される類似の測定系があり、これを用いることで複数の課題を同時に並行し進めることで効率的に開発を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は新型コロナウイルス感染症にともない国内外の会議・研究会などが中止もしくはオンライン開催に変更となっため旅費の支出が発生しなかったことが次年度使用額が生じた主な理由である。次年度使用額のうち物品費についてはビーム透過型ガスセルの設置場所の変更に伴う追加の周辺機器の整備に充てる。
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